憧憬の轍#番外編

素顔の終結、弔い 番外編22

憧 憬 の 轍 2023年2月9日 素顔の終結、弔い 番外編22 国際郵便で届いた小包の差出人の欄には「終=始」と書かれていた。 住所や電話番号などの連絡先には意味不明な文字が書かれていた。 南米のグアテマラから発送されたその小包に一度開封された形跡があっ…

群来 番外編21

憧 憬 の 轍 2023年4月23日 群来 番外編21 「群来」と書いて「くき」と読む。 魚の産卵と放精によって海が乳白色に見える現象の事だ。 小樽はかつて鰊漁で栄えた街だった事は広く知られている。 鰊が単に食料としてだけでなく、当時の人々の暮らしを多方面で…

下宿屋の裸電球 番外編20

憧 憬 の 轍 2022年12月15日 下宿屋の裸電球 番外編20 「下宿屋」 1975年(昭和50年) 阿久悠作詞 森田公一作曲 窓に腰かけあの人は 暮れてゆく空見つめつつ 白い横顔くもらせて 今日は別れに来たと言う だらだら坂のてっぺんの あの下宿屋のおもいでは 泣い…

「19」 番外編19

憧 憬 の 轍 2022年3月30日 「19」 番外編17 「19」。1985年、イギリス人のミュージシャンPaul Hardcastleによるシングルレコードのタイトル。 ベトナム戦争と従軍した兵士のその後を主題にしたものだった。 19は当時のアメリカの従軍兵の平均年齢を表してい…

さよなら僕の友達 番外編18

憧 憬 の 轍 2021年11月28日 さよなら僕の友達 番外編18 たとえ年齢が違えども同じ時代を経験した事に端を発する共感。 さらに似た様な立場で過ごした時間。 森田童子 - さよならぼくのともだち(1975) - Bing video 初めて会った時の事は今でもはっきりと…

あの頃のまま 番外編17

憧 憬 の 轍 2021年11月11日 あの頃のまま 番外編17 1979年のヒット曲、『あの頃のまま』。 Bread&Butterは兄弟で、あの頃から40年以上たった今でも歌っている。 この歌は多くの歌手がカバーしているが、 やはりオリジナルで聴きたい一曲だ。 見た目はすっ…

古い地図を捲る楽しみ 番外編16

憧 憬 の 轍 2021年8月17日 古い地図を捲る楽しみ 番外編16 およそ25年前に津軽地方の田舎道を走っていた時、 偶然に見かけた木造校舎を見て以来、 古い木造校舎を探して写真を撮って来た。 気が付けば既にライフワークと言ってもいいような気もする。 今回…

でぶてん 番外編15

憧 憬 の 轍 2020年12月19日 でぶてん 番外編15 もう1年以上も更新されていないブログがある。 一時期はほぼ毎日のように更新されていた。 内容から書き手はおそらく私と同年代で、 キャンプやカメラなど趣味的な嗜好が似ている事から読ませて頂いていた。 …

遠い明日 番外編14

憧 憬 の 轍 2020年10月10日 遠い明日 番外編14 かつて恋人だった人は今や既に未亡人となり、 二人の娘の将来を気に掛けながら暮らしている。 亡夫が残した遺産で日々の生活に苦労はない。 二人の娘の一人は一度結婚したが、 すぐに別れて帰って来た。 もう…

海峡の向こう側 番外編13

憧 憬 の 轍 2020年3月13日 海峡の向こう側 番外編13 郵便受けにあった白い封筒と青いインクですぐにK美からの手紙だと分かった。 数葉の営業目的の葉書は一瞥して捨て、 青いインクの手紙を開いた。 母親と共に移り住んだ家を改装した事や、 相変わらず津…

「水曜の朝、午前3時」 Merry Christmas 番外編12

憧 憬 の 轍 2019年12月25日 「水曜の朝、午前3時」 Merry Christmas 番外編12 SIMON&GARFUNKELの3枚目のアルバム 『Parsley, Sage, Rosemary and Thyme』に 収録に収録されている「7 O’clockNews/Silent Night」を聴きながら。 クリスマス・キャロルの定…

海峡とほろ苦い泡 番外編11

憧 憬 の 轍 2019年11月2日 海峡とほろ苦い泡 番外編11 K美から手紙が届いた。 SNSやインターネット環境を介したメールが主流の時代にそれは万年筆で書かれていた。 どこか古めかしくも懐かしい横書きの白地の便箋に群青のインクが鮮やかだ。 さらにK美がこ…

続・泡 帰郷 番外編10

憧 憬 の 轍 2019年8月21日 続・泡 帰郷 番外編10 かつて北海道へは青森から青函連絡船で渡るのが一般的だった。 青森駅が近づく頃、車内ではアナウンスと共に車掌が乗船名簿を配り、北海道へ渡る者は住所と名前を走り書きして桟橋へ向かった。 混雑時に2等…

泡 番外編9

憧 憬 の 轍 2019年8月11日 泡 番外編9 つけっぱなしのテレビは帰省客で混雑する駅のホームや、渋滞する高速道路を映し出していた。 疲れを隠せない顔でインタビューに答える男や汗まみれで子供の手を引く女、あるいは大きなスーツケースを持った旅行客で混…

伝言 番外編8

憧 憬 の 轍 2019年6月2日 伝言 番外編8 とある3月の土曜日の午後。 駅まで続く道は自転車で5分もあれば足りる距離だった。 一睡も出来ないままに落ち着かない朝を迎えた。 あの人が今日、この街を離れる。少年の心はその事実だけに支配されていた。 たった…

回帰と邂逅の時間旅行 番外編7

憧 憬 の 轍 2018年10月23日 回帰と邂逅の時間旅行 番外編7 フィルムスキャナ。 要するに“フィルムを読み取る”機械。 一眼レフカメラを初めて手にして以来、ネガはほぼすべて保管してある。 デジタルが一般的になって銀塩フィルムを使う事はほとんどなくなっ…

素顔 番外編6

憧 憬 の 轍 2018年6月11日 素顔 番外編6 悩みに悩み、迷いに迷い、後悔さえも覚悟して。 「運命」は運ぶ命、それは努力次第でどのようにも運ぶ事が出来るのかもしれない。 しかし「宿命」は宿る命、生まれながらの定め。 それに抗う事は、おそらく出来ない…

1985年初夏 鎌倉 紫陽花の花を見るたびに  番外編5

憧 憬 の 轍 2017年7月14日 1985年初夏 鎌倉 紫陽花の花を見るたびに 番外編5 あの人は雨の向うで微笑んでいたように見えた。 そして小さく左手を振って車中の人となった。 別れ際に交わしたとりとめもない短い会話が今も気になっている。 あの時、僕には嘘…

この空を飛べたら 加藤登紀子と中島みゆき 番外編4

憧 憬 の 轍 2017年 3月 30日 この空を飛べたら 加藤登紀子と中島みゆき 番外編4 「この空を飛べたら」。 1978年に加藤登紀子がシングルリリースした楽曲。 作詞作曲は中島みゆき。 翌年、中島みゆきがリリースしたアルバムの中に本人が歌う 「この空を飛べ…

Am Em F E7sus4 E7 

憧 憬 の 轍 2017年 2月 24日 Am Em F E7sus4 E7 「いちご白書をもう一度」。 1975年のヒット曲。荒井由美(松任谷由美)の楽曲をバンバンが歌った。 映画「いちご白書(原題The StrawberryStatement)」は 作家James Simon Kunenによるノンフィクション、 …

忘れ物

憧 憬 の 轍 2017年 2月 23日 忘れ物 コーヒー豆を挽く時、その匂いと共に思い出す事が、ある。 あの日、Nさんは何故に小樽の水天宮に行きたかったのか。 仕事を休んでまで。 O君はその理由も訊かずにクルマを走らせた。 花園の交差点を右に折れて、狭い小路…

昔話

憧 憬 の 轍 2015年11月22日 昔話 感傷的な気持ちになるのは季節のせいばかりではない。 S君とHさんは幼馴染で小学校から高校まで同じ学校に通った。 卒業後はそれぞれ別な道に進んだが、 二十歳の頃にS君が通う大学にHさんが入学して二人は再会した。 …