The Sound of Silence 


憧 憬 の 轍



2017121日 The Sound o Silence 

 

 

作業場の片隅の‘75 CB400Fourは来春また車検だ。

 

エアクリーナーとメインジェット以外はほぼノーマルな状態で調子は悪くないが、

 

シリンダーに滲むオイルが気になっていた。

 

ここのところ他人のバイクばかりで自分のバイクは十分なメンテナンスが出来ていない。

 

「自分のバイクのメンテもろくに出来ねぇクセに他人のバイクなんかイジクッてんじゃねぇ」。

 

CB400Fourがそんなことを言っているような気がした。

 

単なるボルトのトルク抜けかガスケットの限界か。

 

「見っともねぇお漏らしを早く直せ、バカ。 

 

オレのヘッドはボルトをヘリサートするのに2年も待たせやがって」。

 

XL250Rも黙ってはいない。

 

さらに「オレ達はいつになったら走り出せるんだ」って“待合室”からも。

 

夜中に作業場で一人酒を飲んでいるとバイクたちの声が聞こえてくる。

 

そんな声を無視するつもりはないが今はCB93のエンジンの解体に専念させてほしい。

 

連夜の解体作業を一部報告しようと思う。
 
イメージ 1
まずはマフラーフランジ                     
 
 
 
イメージ 2
エンジンハガーのボルト抜取りには1時間かかった
 
 再生作業は後回しの、ただ解体するだけの作業。

 

ひとつひとつの部品が再利用可能かの検証も

 

グリス化したオイルの除去もせずに解体する。

 

 
 これまでに経験した事のないレベル。

 

多くの新しい部品を用意しなければ再生は不可能かもしれない。

 

それでもこのエンジンにもう一度火を入れたくて、今はただ解体するだけ。

 

イメージ 3
 
シリンダーヘッドのサイドカバー                

 

イメージ 4
ポイント側もビスは使い物にならない状態
 
 マニア達に言わせるとCB93と言えるのは

 

『センターカムチェーンの初期型CB125』だけで、

 

長いCB125の歴史の中で僅か3年しか製造されていない。

 

サイドカムチェーンに変更されたエンジンはCB93とは言えないらしく、

 

そう言った意味においてもグランパ・O氏はまたアタリくじを引いたことになる。

 

かつてのC92が「煙突」と言われる

 

ブリーザーがクランクケースにある個体を引き当ててしまったように。
 
 解体の過程は部位ごとに全て写真に収めている。

 

その数は今のところおよそ100枚。

 

全てのカットをここに公開する訳にはいかないので

 

幾つかをかいつまんで載せることにする。
 
 
ボルトとナット、ビス類は、錆びの程度から再利用は諦めていた。

 

ショックドライバーでも回らないものは容赦なく

 

エキストラクターやドリルでアタマを飛ばして、とにかく回す、外す。
 
イメージ 5
サイドカバーを外す                        

 

イメージ 6
ポイント側はこんな状態
 
 
オイル、と言うよりは“かつてはオイルだった”油は既にグリス化して
 
常温では流動性が無くなっていた。
 
ゼリー状と言うか寒天状と言うか、とにかくオイルとは言えないシロモノだった。
 
 
イメージ 7
ヘッドカバーを外す 真っ黒!                 

 

イメージ 8
“かつてオイルだった”ゼリー状の塊
 
 
 さらに難儀したのは遠心分離式のオイルフィルターローター。

 

引っ張れば抜けるC92のモノとも違う。

 

どうやら本体は特殊ナットで固定されているらしい。

 

ローターの内部を、それこそ穴のあくほど眺めた結果、思いついた事があった。
 
本体はM6のビスで固定されているが
 
もうひと回り大きなネジ山が見えたのでM8のボルトを入れてみる。
 
四輪車のドラムブレーキによくある分離用ボルトと同じ構造。
 
半信半疑ながらM8を絞めこんでやっと解体できた。
 
ローター本体を止めていた特殊ナットには手荒いメンテナンスの後が見られた。

 

 

イメージ 9
よく見て考えろ!ってか                     

 

イメージ 10
こりゃねぇーべ! 
 
 焦らない事、急がない事、確証的な仮説を立てる事。

 

「教訓だろうが!」って声が聞こえたような気がした。

 

 
 腰上を解体し終えて問題視しているのはシリンダー内部の錆とカムシャフトの錆だ。

 

ピストンとリングはヘッドカバーを外した瞬間に交換と決めていた。

 

1㎜オーバーサイズのボーリングを考えている。

 

イメージ 11
シリンダーも抜け難かった                   

 

イメージ 12
邪魔していたのはこの錆
 
イメージ 20
クラッチも張り付いてパリパリ&サビサビ          

 

イメージ 13
オイルポンプごとクラッチハウジングを外す
 
 
到底動くとは思えないセルモーターの内部は最後の最後に見るとして、

 

とりあえず外す。

 

「レーサーにセルモーターなんていらねぇべ?」って言いたくなるような状態だ。

 

そしていよいよランクケースを割る。

 

このエンジンの解体はパンドラの箱を開けるようなものだと思っていたが、

 

実はシリンダーとシリンダーヘッドこそがパンドラの箱だったようだ。

 

イメージ 21
 
クランクケースを割ってから外せば良かった        

 

イメージ 14
ン~、言葉が続かない・・・
 
 
浦島太郎の玉手箱じゃなくてよかった、

 

なんて冗談も言えないくらい魑魅魍魎に溢れた

 

シリンダーとシリンダーヘッドは後に回して、

 

クランクケースやカバーなどの古いオイルにまみれた部品は

 

油洗箱でしばらく身を清めてもらう事にした。

 

ギヤ類の検証を急がなければならない。

 

イメージ 15
はい、パッカーンと・・・ ケースは上側             

 

 
イメージ 22
ケースの下側
 
 

 

イメージ 16
クランクシャフト ベアリングが4個                

 

イメージ 17
早く油洗しなければ
 
 
イメージ 18
 
ケース類はすべて“入浴中”                   

 

イメージ 19
1964年だけが「CB93