憧 憬 の 轍
2019年7月28日 熱いのか、暑いのか
「今年の夏にはもう期待していない」と書いた途端に、いきなり夏が来た。
わずか1週間のうちに最高気温が10℃以上も上がり、夜遅くまで涼しくならない。
さらに真夏のような日が差したかと思えば、一転曇りだし雨粒が落ちてきたり、
すぐに晴れ上がって蒸し暑さが増したりと相変わらず天気に翻弄されている。
岩手県は野田村から預かったTLR200を『樵の巨匠』に任せて以来、作業場は少々ヒマな状態になっている。
「プロジェクト・C92-R」を再開させるべく洗油の底に溜まった泥を捨てたり、使えなくなった工具を処分したり、この先使うアテのない部品も整理したりで、いつもとは違った時間が過ぎていた。
一方『樵の巨匠』は久々のバイク修理に喜々としている。
簡単にエンジンが再始動し、「こんなもんだべ」と言った途端に調子が悪くなった。
どうやらキャブレターのせいではなくCDIユニットが壊れかけている。
登録に必要な書類とフレームもまだ入手出来ていないがスイングアームに付いているサイドスタンドの修理。
無残にもボルトに負けたエキストラクター
代用品の正体は?
パイプ状のボルト穴を溶接ごと削り落とし、ロウ付けされていたカラーに商売道具のリューターで切り込みを入れ、ポンチとタガネで切り離す。
φ8㎜のボルトを受けるのは建築工事の現場で使うコンクリート用のアンカー。
M8用のアンカーは長さも丁度よくカラー代わりのワッシャーを溶接し、さらに本来のカラーと同じサイズに形成してからスイングアームに溶接した。
溶接する前に仮合わせ
そして溶接完了
カラー代わりのワッシャーを本来のカラーと同じ寸法にするあたりの拘りが実に『樵の巨匠』らしい。
かくしてサイドスタンドは無事スイングアームに付き一件落着となるはずだったが、実はこのスタンドは以前、別な車両で使うために50㎜ほど切断されていた。
とりえずサイドスタンドとしては使えなくないが、それはそれで気にいらない。
本来の長さに戻すために使うφ18㎜のパイプ材は見つかったようだが、それが廃材だったのか、あるいは何かの機械から取り外したものなのかはまだ聞いていない。
破断し欠損のあるキックレバーのスプライン部分は『林道1号』のT氏からもらったものに交換する予定だが、この部品もクラックが入っていてそのまま使う訳にはいかない。
グラインダーと溶接機が大好きな『樵の巨匠』の、久しぶりのバイク修理にこれほど適した“復帰祝い”はない。
これはこれで気にいらない
これもこれで何とかしなければ
汗まみれで作業をする『樵の巨匠』を見ているのは楽しくもあり懐かしくもある。
しかし不穏な一言もあった。
「このCDIユニット、作れないか?」。
純正部品は問い合わせるまでもなくメーカー廃番の部品だ。
同系列の車種に使われているユニットが使えるかどうかも分からない。
これまでいろいろな部品を解体して来たがCDIやレギュレーターやレクチファイヤなどは解体してみようとさえ思った事が無い。
近々に電気系統に詳しいメンバーを集めて御意見を伺おうと思っている。
それにしてもこのTLR200は乾燥重量90㎏と、他の車種に比べ群を抜いて軽い。
そのためか各部の造りが華奢だ。
同じオフロード系でもモトクロスとは対極的なトライアル競技において、「軽量」がどれほど武器になるのかは考えるまでも無い。
当初は“寄せ集め”な仕上がりになるかもしれないが、このバイクが公道を走れる日を待つことにしようと思う。