憧 憬 の 轍
2020年11月22日 パンドラの箱の底
相変わらずニュースはアメリカの大統領選挙と新型コロナウイルス関連のものが多い。
新型コロナウイルスに関しては本県でもクラスターが発生したために感染者が1ヶ月で200人以上増えてしまった。
おそらく、検査すれば陽性反応が出る人の中で暮らしていると考えなければならないのかも知れない。
前回の記事で、
解体後に保管していた部品のクリーニングを“麦系飲料”を片手にやった話を書いた。
単純作業だが工程にはそれぞれ、
それなりに待ち時間がある。
ガソリンと灯油を混ぜた洗油の中でブラシや刷毛を使って落とせる汚れはまだ楽だが、
半固形形状やゼリー状に変質した油脂類が問題だ。
これを除去するために使っているのがメタクレン(商品名)だ。
最強の脱脂剤だがMSDS(化学物質安全データシート)を見れば少々アブナイ液体ながら、効果は抜群だ。
古い油脂にまみれた部品はガソリンと灯油を混ぜた洗油での洗浄が不十分だったり、
油脂のこびり付きが思ったよりも頑固だったりした場合、
中性洗剤を少量溶いた湯で煮る事もよくある。
台所で使い古したステンレスやホーロー引きの鍋が丁度いい。
熱と洗剤の効果で油分が分解され、
汚れが落ちやすくなる。
出汁もよく出るが灰汁もよく出る訳で、
間違っても美味そうには見えない。
中性洗剤を加えていても所詮は湯なので沸騰しても100℃を少し超えた程度までしか温度は上がらない。
エンジンに使われているオイルシールやOリングなどはそれ以上の耐熱性があるので外さないまま煮ても問題はない。
ただメタクレンに触れるとゴムや樹脂製品は数倍に膨れ上がる。
特に塗装に対しては強力な剥離剤並みに落としてしまうので、
作業の順番はよく考えてから。
古い油脂類を落した部品はブラシでゴシゴシ…、
で済めばいいのだがそれで済むことはまずない。
ブラシもステンレス、
鉄ワイヤー、
真鍮などの金属製のものだけでなく樹脂製のもの、
さらに形状の違う物も使うが、
細かな入隅や複雑な形状の部品は液体の錆取剤を使っている。
数種の液体の錆取剤が売られているが、
もっぱら活躍するのは「花咲かG」と言う名の少々フザケタ名前の商品だ。
錆を落とすだけでなく薄い防錆皮膜まで作ってくれる。
これを鍋で温めて部品を浸しブラシの入らない部分の錆まで処理する。
数分の事もあるが数時間、あるいは数日漬け込む事もある。
麦系飲料を片手に喰えない鍋をかけながら気がかりなのは、
このCB93エンジンの純正部品の多くが入手困難な事だ。
昭和39年2月現在のパーツリストに記載された部品番号で見積もりを依頼したところ、すべて「該当品番なし」との回答だった。
ガスケットは切り出すとしてもオイルシールやOリングの手配には手間だけでなく無駄な送料がかかる。
海外のオークションサイトにまで手を広げれば純正部品はそれなりに見つかるがデッドストックは安くない。
こんな時に役立つのがタイ国製の部品だ。
精度は決して良くないが使えない程ではないし、
日本製の社外品やかつて輸出された純正部品が見つかる事もある。
日本のオークションサイトに出品されているデッドストックのガスケットセットの値段でガスケットだけでなくオイルシールやコンデンサまで手に入るとなれば考えどころだ。
昨日、1.0㎜オーバーサイズのピストンに合わせてボーリング加工されたシリンダーが届いた。
加速するのは作業ばかりではない。
ギリシャ神話によれば、
神ゼウスは男性しか存在しない世界にパンドラと言う名の女性を送り込む。
すべての災いと悪を閉じ込めた箱を持たせて。
地上に着いた彼女は好奇心からその箱を開けてしまい、
人間界にあらゆる災いと悪が解き放たれるが、
箱の底には「希望」だけが残っていたと言う。
解体した部品を入れていた段ボール箱の底には今のところゴミ屑しか見当たらない。
閑話休題 鬼よ、笑え、死ぬほど笑え!
来年の話をすれば鬼が笑うと言う。
まだ11月が終わってもいないのに実質的にバイクに乗れない季節になった。
来年の事を考えて鬼が笑おうが泣こうがそんな事は知った事ではない。
深浦町のWespa椿山への一泊ツーリングも今年で2回目だったが、
10月末日をもってWespa椿山は全施設が閉鎖されてしまった。
そこで来年は岩手県山田町の「船越家族旅行村」のケビンハウスと言う案はどうだろう。
夜は三陸なので海鮮BBQで。
片道約200㎞でWespa椿山ほどではないが施設としては充実しているし、
隣接するキャンプ場もあるのでテントを張る事も可能だ。
ケビンハウスは比較的小規模なので人数によってはケビンハウス組とテント組に分かれてもいい。
往路は海を見ながら、
復路は山を見ながら。
バカはバカなりに夜ごとバカなことを考えているのだった。