憧 憬 の 轍
2020年11月29日 始まりの季節
11月が終わろうとしている。
気温の変化と共に見える景色も変わり、
本格的な冬を予感している。
第3波と言われるCOVID-19感染者の急増は、
検査数に比例した結果とは言え看過できない。
今年の夏は「特別な夏」と言われたが、
今度は「特別な冬」が始まる。
某オークションに出品されていたCB93のデッドストック純正部品、
ガスケットセットがあまりに高額なので数日前にタイ国に発注した。
もちろんまだ届いていないので腰下を組み終える事にする。
このエンジンもクランクケースの合わせ面にガスケットは無い。
マニュアルやパーツリストにはアトモジツト(パッキン剤)との表記があるが、
未だに実物にはお目にかかった事がない。
シリコン系を使うか合成ゴム系を使うか迷ったが、
シリコン系の液体ガスケットを使う事にした。
このエンジンを解体した時に錆付きが酷く、
破断してしまったスタッドボルトがあった。
100㎜程度の長さなので市販のM6ボルトから作る事にした。
クランクケースの上下を合わせるためのナットのほとんどは下側で締める。
袋ナットが指定されている部分もあるがほとんどは一般的なナットだ。
クランクケース下側が錆びやすいのですべてステンレス製の袋ナットにしようと思っている。
もちろんワッシャーも。
悩みのタネのHONDAの旧部品番号だが、
いろいろと調べてみると1957年以前は「C10~」はE型やジュノオ、
「C20~」がJ型ベンリィ、
「C30~」がSA型ドリームなどと区分し、
これに4桁の数字を続けて区分していた事が分かった。
しかし、次第にモデル数が増え対応しきれなくなり1957年以降はプロダクトナンバーを導入するも、
1966年からはNPS(New Parts number System)によって部品番号を管理しているらしい。
手元にあるCB93のパーツリストは昭和39年(1964年)に作成されたものの復刻版だ。
すなわち記載されている品番はNPS以前のもので、
既に通用するものではなかった。
さらに調べてみると「対照表 CROSS REFERENCE TABLE」なるぶ厚い冊子があるらしい。
これが手に入れば多くの事が解決しそうな気もするが、
まぁ、無理だろう。
諦め気分で麦芽飲料を片手に脳ミソが程好く柔らかくなった頃、
思い出したのは昨年1月に輸出専用の1962年型のC105H、
いわゆるハンターカブ 55ccのパーツリストを探した時の事だった。
輸出専用車だったのでパーツリストは国内には出回っていない。
横文字だらけのサイトを漁って見つけた。
そこで今回もそのサイトから検索してみると初期型のCB125として見つかった。
社内呼称のCB93の文字はどこにも記載されていない。
日本仕様とは少々違うようだが見つかったパーツリストに記されている部品番号はNPSによるものと考えて間違いない。
タイ国から近々に届く部品(なんとすべてMade in JAPAN)にしてもパーツリストにしても、
日本製のバイクの再生を外国に頼らなければならないなんて皮肉な話だ。
ところで8月下旬にBMW R1100Rを手に入れてから『樵の巨匠』は再生中のTLR200の事などすっかり忘れている。
と思っていたが部品取りにとジャンク扱いのエンジンを取り寄せていた。
クランクケースから出て来た金属片がよほど気になっていたらしい。
整備用のスタンドに掛けて残ったオイルを抜きながら見回すと、
右側のクランクケースにクラックを補修した跡があり、
オイルが滲みだしていた。
こんなクラックごときに怯む『樵の巨匠』ではない。
まずはスタンドに掛けたまま漏れたオイルを洗い流し、
手際よく解体作業。
外見とは裏腹に内部はきれいで、
走行距離も少なそうなエンジンだった。
昨年までは11月のカレンダーを破る頃には手帳の週間ダイアリーと共に翌年のカレンダーも用意していた。
なぜか今年はそんな準備を何もしないままに12月を迎えようとしている。