憧 憬 の 轍
2021年3月28日 明日に向けて
3月最後の週末。
早いもので今年も1/4が終わろうとしている。
冬の間に積み上げられた雪がまだ残っているが既に春だ。
それなのに待ち侘びた筈の春を迎えるような気がしない。
去年の今頃はもっと春が待ち遠しかったような気がするのは何故だろう。
『スポカブ・ブラザース(弟)』のCB92は待ちに待ったクラッチの部品が届いて早速の組み込み作業。
クランクケースを閉じて後はエンジンを再始動するだけ。
そんなCB92 の隣にYAMAHA YB-1を入れた。
数年前に『樵の巨匠』を通じて作業場に来て以来、
手が付いていなかった。
50ccの2ストローク、カフェレーサー風に改造するつもりだった。
昨秋に十和田湖近辺で、
さらに年が明けて間もなく通勤途中にヤラかしてしまった『🔰若葉マークのS』が乗る事になったのは、
『編集長』から受け継いだGB250 Clubmanにかかる保険料が年齢的に高額なものになる事も関係している。
金銭的に解決できる事とは別に運転技術向上のためには排気量に係わらず経験がものを言う。
1996年製の車体は少々錆が目立つ。
軽整備で走り出せると思っていたが所詮は25年前の車両だ。
四半世紀前の車体だが程度は悪くない。
まずはキャブレターの分解掃除から。
さらにミッションオイルやプラグも交換する事にした。
濾紙を用いたフィルターが標準装備されていながらフロートチャンバーの底には粉状の錆がこびり付いていた。
『編集長』の愛車ZEPHYRχの「白い粉事件」を思い出してしまう。
悪い予感は当たるものでエンジンは始動したが吹け上りが悪い。
気持ちよくスッカーンと回っていない。
キャブレターの中にまだ錆が残っているのだとしたら今回は「茶色い粉事件」だ。エギゾーストパイプやマフラーの詰まりも考えられる。
結局キャブレターは3回解体し清掃組み直し。
さらにエギゾーストパイプに溜まったカーボンを焼いて落とす、
火傷覚悟の作業になってしまった。
とりあえず・・・、
とは言っても燃料コックから滲むガソリンを見なかった事には出来ない。
幾つかのパッキンやガスケット類、
さらにドライブチェーンなどを次の週末までに用意して、
晴れて試乗会だろう。
かつてYMAMAHの専売特許のようなローターリーディスクバルブの吸気形式、
CDI点火。
これは今後、
作られる事のない“時代の遺物”かもしれない。
天気予報は夕方から雨と報じていた。
午前10時頃の気温はおよそ15℃。『編集長』は今日を待ちかねたように愛車ZEPHYRχで「ちょっとそこまでツーリング」へ。
さすがに遠くまで走るにはまだ寒いようで、
帰って来てからはもう一台の愛車CS90のメンテナンス。
やはりキャブレターは本格的にメンテナンスするか交換するしかないようだ。
それにしても賑やかな1日だった。
“手術室に”はCB92とYB-1、
外ではCS90、
そんなところに乱入してきたのは『ポストマン』のSUZUKI TS90だった。
このバイクもYB-1同様に時代の遺物と言える1台だ。
実のところYB-1には妙な違和感を覚えていた。
それはシートが別車種のものだとか後継車種のタコメーターが付いているとかではなく、
メーターのステーに使われていたボルトが必要以上に長かったり追加された配線の色や取り回しに感じたものだった。
そして再び悪い予感は当たってしまった。
メインハーネスに巻かれたビニルテープの下には絶縁もされずに纏められた配線があったり、
ガタ付きのあるステムはボールが3個欠損していたり・・・。
自分が初めてバイクをバラしたのが、
今の『🔰若葉マークのS』と同じ年齢だった事を思い出した。
「自分が乗るバイクは自分で面倒見ろ」
あの日、自分にそう言ってくれた先輩はもういないが、
その一言は今も耳に残っている。
4ストロークと2ストロークの違いさえ明確に理解していなかったあの頃の自分を今さら恥じている。
20歳そこそこの『🔰若葉マークのS』が今後、
どんな形でバイクと向き合っていくのか、
自分には分からない。
彼もいずれは家庭を持ち、
様々な理由からバイクと遠ざかる事になるかもしれない。
彼と自分との間には約40年の年齢差がある。
どんな事をしても縮まらない時間がそこにある。
40年後、
今の自分の年齢になった彼はバイクの事などすっかり忘れているかもしれない。
もちろん自分はこの世の者ではなくなっているだろう。
仮に存命だったとしてもバイクに夢中だった事など忘れ去っているに違いない。
もちろん運転など出来るはずもない。
どんなに願っても、祈っても、拝んでも日々老化する肉体に対し、
機械は適切な処置をすれば肉体以上にその機能を保つことが出来る。
例えば『大魔神・O氏』が所有する1958年製のHONDA JC58。
40年後には100年以上前のものになり、
博物館に展示されていても不思議ではない車体が、もし実働なら・・・。
夢は描くばかりでなく時には託すものかも知れない。
ただ自分は少しでも長く託す側にいたいと思う。