憧 憬 の 轍
2021年10月24日 曇りガラスの向こうにある明日
いわゆる野暮用で福島へ向かったのは22日の昼前だった。
その後、翌23日の夕方までは時間が自由だったので山形県まで足を伸ばしてみたのは、
趣味と言うかライフワーク的に写真を撮って来た木造校舎が山形県には数多く残っているからだった。
時間の許す限り周ってみた。
木造校舎もさることながら山形県は温泉の宝庫だ。
全ての市町村に共同浴場があると聞いた事もある。
最近は銭湯の数も激減し、
関東圏などではトンデモネェ高額な入浴料が当たり前だと聞いている。
料金箱に小銭を投げ込んで入れる温泉があるのは日本が火山の多い国で、
常に地震を警戒しなければならない宿命にあるとしてもありがたい事だ。
温泉組合の共同駐車場(無料)に車を停めて暖簾をくぐったのは小野川温泉の「尼湯」。
入浴料200円也。
浴槽と腰掛があるだけの施設だがこれだけで十分だ。
湯に浸かりながら考えたのは木造校舎探しもそろそろ限界かも知れないと言う事だった。
自分の体力や使える時間の問題ではなく、
その建物が用途を変えても使われているか否か、
さらには文化財として保護されたものとの差があまりにも大きいと感じるからだ。
確かに建てられた当時のままに保存されている建物もあるが、
あまりにもきれいに修復されるとそこに積み重ねた幾星霜が感じられない。
さらに現行の法規(建築基準法や消防法など)に合致させるためには大掛かりな工事も必要となる。
どれもこれも仕方のない事だと分かっていても探しているのは建てられた当時の姿だ。
きれいに仕上げられた廊下や内窓などは当時のものだが古さは感じられない。
所詮は人の手で作ったものなのだから、
いずれは朽ち果てる運命にある。
当時の面影を色濃く残したまま少しでも長くの残して欲しいと願うのは単なる我儘なのかもしれない。
これまでにただの廃墟、
廃屋と化したものを数多く見て来た。
それなら行って見たものの既に解体されて何も残っていなかった方がスッキリする。
移転先の作業場がこれまでのようになるまで、
もうしばらくの時間が必要だ。
数人がテーブルを囲むスペースは何とか作った。
レストア作業もしばらくは中断しなければならないが、
これまでとは違った意味で楽しい冬が迎えられそうだ。
貴重な週末の時間を割いて引っ越し作業に手伝ってくれる仲間には、
感謝、感謝、感謝。