憧 憬 の 轍
2022年5月5日 立夏
暦の上では夏が始まり、沖縄は梅雨入りした。
沖縄が梅雨明けする頃に北東北の梅雨が始まる。
ある意味、一年中で最も過ごしやすい季節だ。
この時期には同じく過ごしやすい初秋とは違った、季節が夏に向かう高揚感がある。
寒ければ寒いと、暑ければ暑いと言いながらも、雪の降る地域で暮らしている者には暑さに対する飢えにも似た感情がある。
昨日の5月4日は恒例の「春一番ツーリング」と夜は「春の安全祈願大祭・春の味覚てんぷら祭り」だった。
いつの頃からか「春一番ツーリング」の行先は野田村の苫屋が定番になってしまった。
三陸沿岸道路の整備に伴い道路事情は変わったが、小型の二輪車にとってはかえって走りにくくなった。
今回は海岸沿いに国道45号を南下するのではなく、久慈市山根から白石峠を越える事にした。
久々にツーリングに参加した『樵の巨匠』は、山菜取りか渓流釣りにでも行くような出で立ちでHONDA TLR200に乗って来たが、背負っているバックパックには異様な物が・・・。
このTLR200は2015年9月に苫屋の主人が「そろそろ手に負えなくなって来た・・・」と言うので預かった物だったが最終的に『樵の巨匠』がレストアする事になった。
今回のツーリングは7年ぶりのお里帰りでもあったが、皆が背中のガイコツ(?)が気になって仕方ない。
この楽器の入手の経緯は『樵の巨匠』もはっきりした事が分からないらしい。
苫屋には幾つもの民族楽器があるので捨ててしまうよりも片隅に置いてもらおうと考えたのだった。
『特攻隊長』は「後ろを走れば祟りがありそうだ」と言ったが、あながち冗談では無かったかも知れない
自分にとって今回のツーリングは、大奮発して入れたMOTULのテストでもあった。
これまで使って来た安物の鉱物油との違いを体感したい。
走り出しは順調だったが20㎞も走らないうちにクラッチレバーに違和感を覚えた。
徐々にクラッチの切れが悪くなりワイヤーが切れてしまった。
スペアのワイヤーをシート下に常備していたのですぐに交換して再び走り出したのだったが、そのワイヤーも途中で切れてしまった。
目的地にさえ着いていないばかりか、帰るにしても約100㎞をどう走るのか?
切れてしまったワイヤーは捨てる事になるので手持ちの工具を使い荒業で乗り切るしかなかった。
「緊急事態の対処方法をご披露しました」なんて言えるのは迷惑をかけながらも無事に帰って来られたからだ。
さらにブーツのベルトも切れていたなんて、祟りなのか呪いなのかを一手に引き受けてしまったのかも知れない。
応急処置とは言えクラッチが使えるようになった頃に気が付いたのはオイルの事だった。
走り始めは何も変わらないような気がしていた。
それどころかギヤの入りが悪いとさえ感じていた。
クラッチの切れが良くなった途端にこれまでよりも軽い操作で変速できるようになった。
クラッチワイヤーは注文してもこの週末には間に合わない。
市販のステンレスワイヤーで代用品を作った。
幸いにも週末の天気予報に雨のマークは無い。
今年から明らかに自己責任の整備不良には罰金が課される事になったので、『戒めの部品』の賽銭箱に千円札を入れた。
国際的ハッカー集団Anonymousはロシア人の約一1億の電話番号や約2億のメールアドレスをハッキングにより所得し、ウェブサイトで公開した。
すなわち誰もがロシア人に発信出来る事になった。
電子的なデータがもたらす利便性とは裏腹に、新しい形の戦争が始まった。
そしてこれはひとつの始まりでしかない。