憧 憬 の 轍
2022年5月22日 物思い
初夏を予感した金曜日(20日)を境に天気は下り坂。
鈍色の空模様と風の冷たさが今度は梅雨を予感させる。
今年の梅雨前線は早めに北上するらしい。
梅雨が明ければ季節は夏だが、期待通りの暑い夏が来るのだろうか。
空梅雨だったり、冷夏だったりする可能性も捨てきれない中で、天気予報に一喜一憂する日が始まった。
昨年、『樵の巨匠』はレストアを終えたHONDA TLR200を駆って八甲田山麓の林道を走り、川原で蕎麦を啜ったりして夏を楽しんでいた。
彼は海が苦手と言うか海水が苦手らしく、水遊びはもっぱら海ではなく川だ。
今年もそうしてくれるのかと思っているとオフロード車を募っての林道ツーリング提案し、勝手に6月5日と決めてしまった。
その無謀とも言える計画に向けて、多忙な『林道1号』ことT氏のTL125を『樵の巨匠』のガレージで整備する事になった。
エンジンの始動性も悪くないし走らせてみても特に違和感は無かったが、作業を進めるにつれて次々に気になる点が増えて行く。
サイドスタンドが時々チェーンに干渉するのはフレームの受け側が摩耗した事が原因だったので、まずは溶接で肉盛りした。
『樵の巨匠』は左側のサイドカバーの納まりが悪いのはメインハーネスを始めとした配線に問題があるとして、大幅な変更に手を付けた。
本来6Vのバイクを12V化する過程で電装がオリジナルと変わっている。
確かにカバーの内側にはバッテリーケースだけでなく、フラッシャーリレーやレギュレーターが混み合っている。
バッテリーケースの奥にはエアクリーナーボックスがあるがその位置は変えられないので、バッテリーケースのステーに手を加えて僅かな余裕を作った。
とりあえずは問題無く走ったTL125だがプラグを抜いてみると・・・。
『樵の巨匠』によれば規定量を大幅に超えて入れられていたエンジンオイルが原因ではないかと言う。
キャブレターもひと通りオーバーホールする予定なので改めて燃調を採り直さなければならない。
硬くクセが付いてしまったプラグコードもシリコンに替えた。
タンクのカラーリングはBIALS TL125だがこのエンジンは後継モデルのIhatovo TL125のエンジンだ。
BIALSのエンジンはポイント点火だがこのエンジンはCDI点火。
ポイント点火が後継モデルでCDI点火に進化するのは、今や『大魔神・O氏』の下駄代わりのXL125もそうだった。
XL125もBIALSも同じ系統のエンジンで初期型が122cc、後期型が124ccとなる。
誇らしげにCDIと書かれたカバーを外す。
別名「貝殻」と呼ばれるカバーだが、「武田久美子の水着」と言う呼び名もあるらしい。
錆の粉だらけの内部に「開けてびっくり久美子の水着」だったが、こんな汚ねぇ物をグラビアクイーンに着せる訳にはいかない。
ここまで手を付けてしまうとせめて腰上だけでも、いやクランクケースも割って全バラして・・・、と言いたくなるがそんな時間は無い。
残すはキャブレターのオーバーホールだが担当者は『編集長』だ。
彼は最近、Zephyrχのキャブレターだけでなく廃車同然のCB400F(NC31)のKEIHIN VP型の再生にも挑戦している。
『樵の巨匠』の整備作業にケチを付けながら傍観していたつもりが宿題を貰ってしまった。
訳の分からない樹脂でいい加減に補修されたサイドカバーの修理だ。
これまでの経験から接着剤や部分的な補強では先が見えているだけでなく、カバーには全体的に歪みがある。
勢いで「FRPで作り直す!」と言ってしまった。
ヤバイな・・・。
サイドカバーを6月5日のツーリングに間に合わせる自信は無いが、サイドカバーは無くてもバイクは走る。
それよりも気がかりなのは古びたタイヤだ。
トライアル用のタイヤは柔らかく減りやすい。
オゾンクラックだらけのタイヤと言えば『チャレンジャーのタカシ』、出張修理を依頼しようかって、それは笑えない冗談だ。
『樵の巨匠』のガレージではキャブレター担当の『編集長』が奮闘中だった。
その後、CDIの接点の誤組などもあったがIhatovoTL125は無事に再始動した。
宿題と言えば6月5日のツーリングに、今や「オモラシ君3号」となってしまったHONDA XL250 PARI-DAKARで参加しろと言われ、急いで修理しなければならなくなった。
『樵の巨匠』は「オイルが漏れても走れるんだから、修理は後でゆっくりやればいい」などとほざきやがる。
シリンダーヘッドやヘッドカバーのボルトをすべてスタッドボルトに替えてしまいたいが、今回はヘリサート加工で対処する事にした。
XL250Rのエンジンに本格的に手を付ける前にやっておきたいのは‘75 CB400Fourに入れたMOTULのテストだ。
5月4日のトラブル続きのツーリングの際に1ℓあたり約5㎞伸びたのは偶然だったかもしれないからだ。
目指したのは横浜町の菜の花畑。すでに満開の時期は過ぎているが今回は花が目的ではない。
テストの結果は走行距離145㎞で消費した燃料が4.45ℓ。
実に1ℓあたり31.86㎞。
‘75 CB400Fourのタンク容量は14ℓなので、これまでの1ℓあたり約25~27㎞では350㎞~380㎞が、32㎞で計算すると約450㎞となる。
仮にオイルの寿命が3,000㎞として、約120~110ℓ必要な燃料が約93ℓで済む事になる。
この差を現在の物価でガソリン代に換算すると2,800~4400円だ。
実に吝嗇な、いわゆるセコい計算をしている訳だが、これまで安物のオイルを早めに交換しても改善しなかった事も改善されるなら先行投資とも言える。
しかしまだ結論が出た訳ではない。
真夏の炎天下でギヤが入り難くなる事については検証できていないのだとしても、高価なものにはやはり高価な理由があったのだった。
Ihatovo TL125が再始動した『樵の巨匠』のガレージで『編集長』はまた別なキャブレターを解体していた。
知人が約10年間倉庫の奥で保管していたSUZUKI SAVAGE400のキャブレターだ。
このキャブレターはその後、鍋に入れて煮たりパーツクリーナーに浸したりしながら再生を目指している。
先日再生を試みたCB400F(NC31)のKEIHIN VPと同様に負圧式のキャブレター、ダイヤフラムの状態は良かった。
いわゆるアメリカンタイプの400cc単気筒が再始動する日も近い。
午後から降り出した雨は上がっても夜になって霧が濃くなった。
明日は雨のようだし天気予報に傘のマークが増えている。
アテにならないと思いながらも梅雨入りと梅雨明けの予報が気になる。