誰がための春

憧 憬 の 轍

 

2024414日 誰がための春

 

弘前公園の桜が咲いた。

次の週末あたりは満開で公園内は朝から賑わう事だろう。

COVID-19、いわゆる「コロナウイルスの5類移行」を受けて今回は飲食禁止エリアなどの制限は無い。

ただ感染者数は再び増えている。

津軽地方の花見は派手で豪華だ。

以前、五所川原の芦野公園で開かれた「幻の観桜会」は昭和30年代を懐かしむ“樟脳かまり”のする一張羅に身を包んだ花見会だった。

今よりも娯楽の少なかった時代、雪に閉ざされて冬を過ごした者たちにとって桜の咲く春は、待ち遠しい季節以外の何物でもなかった。

 

咲いているのは桜だけではない


               

 

先週は小さな蕾だった

 

 

 

 

 

キャブレターやV-Boostユニットはシリンダーヘッドやヘッドカバーを再塗装して組み付けるだけのつもりでいたが、油面調整を忘れていた。

本来なら4基のキャブレターを組み合わせる前に終わらせるべき作業だ。

一般的なサイドドラフトのキャブレターなら本体とフロートチャンバーの合わせ面からフロート端部までを測るのだが、このMIKUNI BDS35の場合は? 

CLYMERのマニュアルによれば本体側面に基準線があり、そこから15~17㎜となっている。

ドレンパイプに測定器(おそらく目盛りが記されたガラス管?)を付けて測るのだが、そんなものは当然持っていない。

要は水パイプ式に実油面を測ればいいのだから汎用のビニールホースで代用した。

15~17㎜なので16㎜で揃えたいが、調整前の油面は10~25㎜と見事にバラバラだった。

 

MIKUNI corp.の下にある基準線


               

 

基準線はフロートチャンバーのカバーにもある



 

キャブレターだけでなくV-Boostユニットにしてもエギゾーストパイプにしても汚れ方の差が大きい事が気にかかっていたが、これだけ油面にバラツキがあると言う事はかなり燃調の悪い状態だったと思う。

それでも普通に走っていたのか? 

型式からアメリカ仕様で逆輸入された車両なのは分かっているし、給排気系をはじめ色々と手が付けられている。

昨年11月、このVMX12を貰い受けてすぐにエンジンは始動したが、走らせてみなくてよかったと今にして思う。

 

即席の「油面測定器」 2本目が16㎜のライン


       

 

16㎜で調整完了



 

実油面で測るしか方法が無いのでフロートのバルブを押し上げるツメを起こしてみたり倒してみたり・・・。

その塩梅と言うか力加減は、これまでに何度もキャブレターを弄って来た経験と勘が頼りだ。

このツメが金属製なのでこんな調整が出来るのだがフロートがすべて樹脂製のものもある。

それは新品に交換しなさいと言う事かもしれないが、安い部品ではない。

純正部品を、さらに 4気筒分ともなれば福沢諭吉1枚では足りない・・・。

 

 

塗膜の劣化が激しいシリンダーヘッドはラジエーターの裏側が特に酷い。

ワイヤーブラシなど使わなくても軽く振れただけでパラパラと剥げ落ちてしまう。

ルーターにステンレスのブラシを付けて使えば効果覿面だ。

 

ラジエーター裏側が最も酷い


                 

 

ワイヤーブラシさえ必要ない



 

シリンダーヘッドの劣化した塗装を完全に落とすにはシリンダーヘッドを外してサンドブラストするのが手っ取り早いのは分かっているが、エンジンを降ろさずにシリンダーヘッドだけを外すのはかなり難しそうだ。

シリンダーヘッドカバーは外すことが出来たので、サンドブラスト後に再塗装する予定だ。

 

外したシリンダーヘッドカバー


                 

 

このあたりの傷みが特に激しい



 

オイルスラッジもほとんど無い 


                

 

カムシャフト周りも問題無いようだ



 

区切りの良いところでVMX12の作業を一段落させて久しぶりに‘75 CB400Fourを走らせてみようと思っていたが、シリンダーヘッドカバーまで外してしまったのでシリンダーヘッドの再塗装に向けた準備でこの週末も終わってしまった。

 

 

眠りにつこうとしていた機械にもう一度息吹を与えてみたい。

それはある意味で傲慢な考えかも知れないが見過ごす事が出来ない時がある。

その機械をもう一度往時の状態に戻してみたいと思う気持ちは恋愛感情、いわゆる“ひとめ惚れ#”にも似ている。

なぜならすべての古い機械に同じ感情を持つ訳ではないからだ。

人間であれば“巡り逢い”とか“巡り合わせ”と言うのだろうが、機械に対してもそれは同じだ。

たとえどんな美男美女であっても万人が異性としての魅力を感じないのと同じだ。

そして巡り合ってしまった運命は受け入れるしかない。

 

「老いらくの恋」と言う言葉がある。

昭和23年(1948年)、歌人川田順は親子ほど年の離れた弟子との恋愛の末に家を出て、亡き妻の墓前で自殺を図った。

そこで「墓場に近き老いらくの 恋は怖るる何ものもなし」と詠んだ事から生まれた言葉だ。

時に川田は68歳。

作家・有島武郎も既婚の担当記者でありまた編集者だった女性との恋愛関係の末に心中した。

数通の遺書の中に「愛の前に死がかくまで無力なものだとは此の瞬間まで思わなかった」と言う一節があった。

極めて個人的な話だが、この一節が無ければ深作欣二監督の映画「華の乱」は生まれなかっただろうと思っている。

それにしても映画のキャストが豪華すぎる。

与謝野晶子の歌集「乱れ髪」や詩「君、死にたもうことなかれ」、そして彼女の人生そのものに対する批判などは多くあっても、言葉から滲み出る“本能”は誰も否定できない程の勢いを持っている。

女性の地位が今よりも低かった時代にあって、それは勇気が必要な事だったはずだ。

 

 

恋愛感情の奥底にはどんなに理性的な話を説いても否定できない本能的な性欲が潜んでいると思っている。

本能や衝動を理路整然と説明する事は不可能なまでに難しい。

なぜなら、そもそも理由など無いのだから。

恋愛感情の奥底に燃えていたはずの本能は年齢を経るにつれて勢いを失い、今や風前の灯火だとしても火口の向かう先が変わっただけとも言える。

言い方を変えれば、既に老齢年金を受給できる年齢にも拘らず、異性の事にしか興味が無い人生は寂しい。

もちろんそんな人生も否定するものでは無いが・・・。

古びた機械をいじりながら週末を過ごす。

それは「老いらくの恋」にも似た「老いらくの行為」かもしれない。

 

 

桜は衝動的に咲く

憧 憬 の 轍

 

2024411日 桜は衝動的に咲く

 

胴吹き桜は待ちきれずに咲く。

 

そして枝の蕾が後を追う。

 

 

 

所用で八戸へ。

かねてからこの機会にOリングやガスケット類を専門に扱うN商会へ行き、VMX12のキャブレターに使うOリングを購入する事を考えていた。

N商会は平日のみの営業なので、所用よりもむしろOリングを買い求めるついでに所用を済ませたようなものだった。

YAMAHA純正部品のドレンプラグのOリングは1個あたり約900円。

その他にもダイヤフラムカバーに入る小さなOリングやV-Boostユニットとシリンダーヘッドの間に入るOリング、どれも各4個必要だ。

これらをすべて純正部品で注文すれば福沢諭吉が1枚必要になる。

N商会には以前、‘75 CB400Fourのキャブレターを修理した時以来世話になっている。

今回も潰れて原型を留めていないようなOリングを持ち込んだが見事に適合するOリングを入手出来た。

材質はNBR-70-1、言うまでもなく耐ガソリンの製品だ。

3種類のOリングを計12個、支払いは・・・、野口英世を1枚出してオツリが来た。

 

野口英世を1枚でオツリが来た     


               

 

これが1個約900円! 画像はもちろん借り物です



 

自分のような者は純正部品を扱う業者にすれば迷惑甚だしいかも知れないが、特殊な部品以外、特にOリングやガスケットなどは販売価格を見直すかパーツリストに寸法を記載するなどして貰いたい。そのうえで材質の選択を誤ったり、あるいは無知だったりしても、それは正に自己責任なのだから。

 

 

このVMX12を「OHMACHI BASE」に運び込んでからもうすぐ半年になる。

初めはこんなデカくてクソ重たいバイク・・・、と思っていたが、手を付ければ付けるほど、どこにでも普通にあるバイクに思えて来るから不思議だ。

そうかと言ってスーパーカブや原付のスクーターのような“どこにでもある”ものでは無い。

2010年の春、‘75 CB400Fourの再生に手を付けてからのおよそ3年間は、既にメーカー廃盤となった部品や代用品を探す毎日だった。

その後の空前とも言える旧車ブームのおかげで幾つもの部品が復刻された。

それは嬉しい話だったが粗悪な造りの社外品も多く、さらに「純正部品」であっても海外で製作された物には国産の精度は期待できなかった。

時代はキャブレターではなくフュエル・インジェクション、ポイント点火ではなくCDI点火、それらが燃焼効率を上げるために組み込まれたCPUで制御されているのが当たり前だ。

一部のマニアックな者達だけに通じる価値観にも似た感覚は言い表すのが難しい。

 

 

 

 

 

ほととぎすが鳴く前に

憧 憬 の 轍

 

202447日 ほととぎすが鳴く前に

 

2日早朝の地震

午前4時24分。

震源岩手県北部、当地でも震度5弱を観測した。

多くの人々が揺れに叩き起こされた時刻だった。

そして3日朝には台湾の北部でマグニチュード7を超える地震が発生し、一時、宮古八重山諸島沖縄本島津波警報が発令された。

元日の能登地震の続報と共に痛ましいニュースが続いている。

そんな暗いニュースが続く中、北上する桜前線は勢いを増している。

開花宣言から満開になるまでの時間が今年は短い。

春は駆け足で過ぎ去るのかも知れない。

 

 

 

 

最近は部品の洗浄に「サンエスK1」を使っていたが洗浄後に残る成分の結晶を落すのが面倒だ。

特にキャブレターなどの繊細な部品には、やはりメタクレン(塩化ジクロロメタン)が最適だと思っている。

キャブレターと共にVMX12の肝とも言うべきV-Boostユニットのクリーニングを終えた。

液体ガスケットまみれだった合わせ面のOリングやブラインドプラグは新品を用意したが、インシュレーターは硬化していないので再利用する事にした。

 

V-Boostユニットは完全分解して


               

 

キャブレターもV-Boostユニットも組み立て完了



 

キャブレターもV-Boostユニットもサッサと組んでエンジンを再始動したいところだが、ボロボロに剥げているシリンダーやシリンダーヘッドの再塗装の準備に取り掛かった。

INポートから見えるバルブは決してきれいとは言えないが、そこまで手を付けるとなればエンジンを降ろし分解しなければ気が済まなくなる。

とにかく今は最低限のメンテナンスと外見が小綺麗に見えるだけでいい。

再塗装のために劣化した塗膜は出来る限り落とす。

 

塗装の劣化が激しいのはシリンダーヘッド


         

 

劣化塗膜を落せるだけ落す・・・つもり



 

シリンダーヘッドに使われている塗料とシリンダーやヘッドカバーに使われている塗料は材質も仕上がりも違うようだ。

シリンダーやヘッドカバーの塗装は劣化が少なく艶も残っている。

黒色の耐熱塗料は既に用意してあるので、艶の出具合で塗り分けるのも面白いかも知れない。

『樵の巨匠』は山専用車両として再生したはずのYAMAHA TY175を公道仕様にするために保安部品の取り付けをしている。

競技用車両だったためにジェネレーターにコイルは1個だけしかない。

灯火類やバッテリー充電のためのコイル、さらにハーネスやレクチファイヤ、レギュレーターなども増設して目指すは12V 化らしい。

そしてフン詰まり状態のサイレンサーからaprilliaのアルミ製のサイレンサーに替えようとしていた。

 

イマイチ安定しねぇ~


                      

 

このサイレンサーを使う?



 

冗談ではなく本気らしい・・・


                  

 

この部分の制作がキモ・・・溶接祭り?



 

先週末からGB250 Clubmanのメンテナンスが忙しくなった『スポカブ・ブラザース(弟)』は以前から気がかりだったドライブチェーンを交換し、早速の試乗会。外装は再塗装、シートも好みに合わせて作り直した。

この冬に予定していたメンテナンスは一応予定通り終わった。

 

ドライブチェーン交換中 


                    

 

 

 

この冬の予定が今ひとつ、いや大幅に順調でないのは『編集長』。

実走距離が40,000㎞を越えているKAWASAKI ZEPHYRχの腰上を、「春一番ツーリング」までに終わらせたかったが既に間に合いそうにない。

日曜日とは言え多忙な中、今日はシリンダーのサンドブラスト、さらに昼食も摂らずにヘッドカバーの合わせ面の面研。

 

見落としが無いように・・・真剣です


              

 

ブラスターの中は砂嵐~



 

ブラスト完了 この後は洗浄と乾燥


               

 

ヘッドカバーのオイルストーン磨き



 

趣味的な事とは言え、週末ごとに繰り返される油まみれ、埃まみれの作業は、興味の無い人の目には奇異に映るかもしれない。

ましてその出来栄えに一喜一憂している姿は、ある意味で滑稽に見えるのかも知れない。

そんな事を考える事もある。

それでも自分なりの目標に少しずつでも近づいている実感があるから楽しい。

 

日が長くなった。

つい1か月前なら薄暗くなっていた時刻でもまだ明るい。

そして日曜日は時間の経過が加速度的に早いと感じる。

今年の春はいつもの春よりも速い駆け足で初夏を連れてくるような気がする。

 

 

 

 

 

閑話休題 疑心暗鬼の末に

ツーリングにはカメラを持って行きたい。

最近ではスマートフォンがあればそれで十分に足りる時代だが。

様々な技術の進歩と共に画像の加工技術も進み(進みすぎたくらい)、インターネット上では無加工の画像の方が少ないかも知れない。

履歴書やパスポートの申請にもマンガみたいな顔写真を添付するバカも少なくないとか。

デジタルカメラが一般的になって明るさなどの調整は簡単に出来るようになった。

自分もその画像を使う用途に合わせて調整している。

しかし写っている物の大きさや形や色までを変える加工はCGやVXの世界の事だと思っているし、「写真」=「真実を写す」と言う意味から大きく逸脱していると思っているのでそれは絶対にやらない。

ネガフィルムを装填し、息を止めてシャッターを切っていた頃の緊張感は既に無いが、目で見たままの風景と出来上がった画像のギャップにいつもアタマを悩ませている。

おそらくそれは高機能なカメラ(すなわち高価)を手に入れても解決しない問題だと思う。

コンパクト・デジタルカメラ、いわゆるコンデジをポケットに入れてツーリングに出かけた事もある。

小型なので携行は楽だったが、やはり1眼レフに拘りがある。

さらにカメラ背面の液晶ディスプレイを割ってしまった事もあった。

 

色違いの同型機種は安価で手に入れた


          

 

ディスプレイ以外はスペアパーツがあるってか?



 

ツーリングの際にタンクバッグは実に便利だが金属製のタンクに強力な磁石で固定するのが気にかかる。

そこまで心配しなくても・・・、と言われても磁気がカメラに与える影響が気になる。

結果、タッパウェアにクッション材を敷き詰めた専用のケースを作り、荷物の上部に入れたりもしたが、まったく使いやすくなかった。

 

メンテナンス中のVMX12でツーリングに出かける事を前提に小型のシートバッグを手に入れたのは、カメラと少々の荷物専用のバッグをタンデムシートに取り付ける事を考えたからだった。

ひと昔前のバイクならタンデムスペースには余裕があったが、最近のバイクのタンデムシートは申し訳程度の大きさしかない。

はなから二人乗りなどする気の無い自分にはどうでもいい事だが・・・。

容量約6ℓのバッグに緩衝材でカメラを固定し、残りのスペースに雨具などを収納できれば、これだけで日帰りのツーリングには十分だ。

荷物が多いツーリングの時は振り分け型のサイドバッグを使うと決めている。

 

容量約6ℓのシートバッグ 


                   

 

雨具なんて入れるスペースは無い!



 

ところが、またしても考えが甘かった。

容量約6ℓは所詮6ℓでしかない。

カメラを入れ、空いたスペースには予備のバッテリーやメディアなどを入れるには丁度いいが雨具までは入りそうにない。

さらに三脚も持って行きたいが急いで取り出す必要が無く、防水性に神経質にならなくてもいい機材だと考えればどうにでもなるか・・・。

VMX12のエンジン再始動や試走、さらに車検取得までにはまだまだ時間がかかると知りつつも、都合のいい事ばかりに想いを巡らし、酒を片手にほくそ笑みながら今夜も夜が更ける。

 

 

 

 

 

雑草のごとく

憧 憬 の 轍

 

2024331日 雑草のごとく

 

関東地方は時ならぬ陽気に、桜の開花どころか初夏を思わせる1日だったらしい。

本州最北端の当地でも日差しに力を感じるようになった。

気が付けば作業場=「OHMACHI BASE」の隣の家の庭にはネコヤナギの花穂が育っていた。

雪の下で茶色に枯れていた雑草の中にも緑色の新芽が見える。

やがて力を増す春の日差しを受けて驚くほどの速さで成長するだろう。



 

 

 

長年バイクのレストアを趣味として来た者にとって、純正部品が毎年値上がりするのは頭痛のタネのひとつだ。

諸外国に比べて我が国の人件費の低さが問題視されている今、値上げは必然的結果なのだろう。

そんな事を考えながらもメーカー純正部品の値段には購入を躊躇してしまう。

キャブレターのドレンプラグのOリング(3.8×1.9)が1個あたり約900円だ。

4基分必要なのでこれだけで約3,600円。

さらにジェットブロック底面のキャップは2種類あり、これも1個あたり638円だから4基分で計8個、すなわち5,104円。

 

こんなゴム栓が638円


                      

こんな小さなOリングも約500円

 

格安の社外品が増えるのも納得できるが、多くの社外品は「漢字の国」の製品だ。

品質的にも精度的にも信用しきれない。

Oリングや樹脂製のキャップなどをメーカーが自ら作っているとは思えないので、各メーカーは純正部品として販売するために徹底的な品質管理をした結果の値段なのだろうと思うしかない。

 

 

キャブレターはチョークレバーを連結すれば搭載できるまでになった。

作業はVMX12最大の特徴とも言うべきV-Boostユニットの取り外しとメンテナンスだ。

 

コントロールユニット以外は単純な構造


           

V-Boostユニットを外した状態

 

外したV-Boostユニット 


                   

汚れと液体ガスケットにため息が出る

 

合わせ面はオイルストーンでシャコシャコ・・・        

 

地道な作業が続く



 

昨年11月、初歩的なメンテナンスだけでエンジンは簡単に始動した。

各部分を解体し、メンテナンス作業を進めるにつれて信じられないモノを見ているような気がする。

V-Boostユニットとシリンダーの接合部分に塗られていた液体ガスケットは明らかに2種類あり、Oリングは潰れきっていた。

泥の混じったオイルと埃の固着しかけたマニーホールドは汚れ方が違い過ぎた。

洗浄液に浸す前に4基のひとつずつを確認する。

今さらながら気が付いたのは2番のマニーホールドにあるべき樹脂製のキャップが無い事だった。

キャブレターの同調を採る時に負圧を測るパイプだが、これが無いままなら二次エア―を吸いまくる。

エンジンを始動させた時にアイドリングが3,500rpmだった事を今さら思い出してもどうしようもないが・・・。

そう言う事だったんだと思うしかない。

 

マニーホールドのキャップ 

これじゃ2次エア吸いまくりでしょう!



 

V-Boostユニット自体は特に複雑な構造ではなかった。

エンジンの回転数を検知したコントロールユニットとサーボモーターによって作動する。

コントロールユニットやサーボモーターのメンテナンスまでは出来なので、バタフライバルブの密閉性や開閉の具合を確認するくらいしか出来ることはない。

 

V-Boostユニットの油汚れを落としながらその機構に感心している側で、『若葉マークのS🔰』のBANDIT250が、さらに『特攻隊長』のVTR250も『スポカブ・ブラザース(弟)』のGB250も排気音を響かせている。

『スポカブ・ブラザース(弟)』によれば『若葉マークのS🔰』のBANDIT250はスパークプラグの締め付けが甘かったり、さらにプラグのクリーニングが不十分だったりと、まだまだ🔰が付いたままだった。

 

何とか試走できるまでになったな・・・ 長かったね

 

    

250cc軍団はとりあえず出走準備完了!

 

1日の最高気温が15℃を上回ると言ってもまだ風は冷たい。

近所の公園の桜が満開になるまでは、まだ春ではないと思う事にした。

 

 

春うらら

憧 憬 の 轍

 

2024324日 春うらら

 

3月の初め頃からスーパーマーケットには春の山菜が並んでいる。

栽培物でなかなか高価だが今年もそんな季節になった。

今年は雪が少なく暖冬だったので天然の山菜を口にするのも早いかも知れない。

例年であれば5月初旬の「春一番ツーリング」の道すがら手に入れた山菜で「春の味覚・天ぷら祭り」だったが、今年は4月に出来そうだ。

最高気温が10℃を僅かに上回るだけで暖かいと感じ、遠くに見える山の色が変わって来たような気がする。

昨日、高知地方気象台は今季、最も早い開花宣言を発表した。

 

 

 

 

VMX12のキャブレターの3番と4番を一段落し、残る1番と2番に手を付け始めた。

3番地と4番よりも汚れが酷く、見るからに強敵だ。

しかし怯んではいられない。

これを済ませなければ次のステップに進めないばかりか、まだV-Boostユニットのクリーニングや動作確認や腰上のイカれた塗装の除去や再塗装も残っている。

 

3番と4番 まだ仮組の域を出ない


             

1番と2番の内部



 

孤軍奮闘したおかげで3番と4番の時よりも少しだけ要領を得た作業をしている。

こびり付いた油脂類を落すために洗浄液にキャブレター本体を漬け込む時間や、固着しているビス類を外すために施した潤滑剤が行き渡る迄の時間などが大体わかって来たが、ここまで作業を進めて分かった事は1番2番と3番4番に分割するのではなく、1番3番と2番4番に分割するべきだった事だ。

どちらにしても4基をすべて解体するのだから同じと言えば同じだが。

 

エンリッチャーのダイヤフラムが貼り付いている


      

 

末期的な状態



 

錆が発生していたビスやボルト類はまず油分を分解する洗浄液で洗い、錆を化学的に分解する液体に入れ、水洗い後に防錆処理をする。

集中的に作業を進めることが出来れば3番と4番の時よりも早く終わらせる事が出来るかもしれない。

・・・なんて希望的憶測は得てして実る事が稀な事も知っている。

それでも地道な作業を続けるしかない。

「キャブレター鍋」は作業場で時々やるが出るのは出汁ではなく灰汁ばかり。

薄い中性洗剤を使っていた事もあったが、最近は水溶性の脱脂洗浄剤を使っている。

汚れ落ちは良好だが洗浄後に丁寧に水洗いしないと成分の結晶が白く残ってしまう。

取り扱いが少々難しいが脱脂洗浄にはやはりメタクレン(塩化メチレン)が最適だと思う。

 

蓋は今回もバルブシートごと叩き出す

 

キャブ鍋 出汁どころか灰汁だらけ



 

抜いたビスやボルトが錆びていた場合、穴には錆が残っている。

乾燥した洗剤の成分も気にかかるので、必ずタップでさらう事にしている。

これを怠るとすぐにまた錆が出たり適正な締め付けトルクを得られなかったりする。

 

細かな錆をタップで掻き出す


                 

さらにパーツクリーナーで洗い出す



 

MIKUNI BDS35の4基掛け、当然キャブレター自体は4基とも同じだがフュエルホースの取り回しやスロットルリンクなどの関係でまったく同じものではない。

隣接するキャブレターとの連動性を忘れると後で手間が増える。

同じ4基構成でも並列ならもっとやり易いが、V型ならではのアタマの体操の連続だ。

 

中身は同じでもホースの取り回しが違う


           

4基仮組の前の点検



 

考えていたよりも作業が順調だったのは3番と4番で学んだ事(教訓?)が生きていた証だと思っている。

4基を連動させるリンクや油面の初期設定などは次週に持ち越すが、ひと通りのカタチに戻す事は出来た。

そうは言っても試走までの工程はまだ長い。

 

当初の予定ではもうとっくに作業が終わっていなければならないSUZUKI Bandit250 GSF250を、今日こそは終わらせるために『若葉マークのS🔰』は午前中から昼食も忘れて作業を続行。

そんな『若葉マークのS🔰』を気にかけてアニキ分の『スポカブ・ブラザース(弟)』も『特攻隊長』もやって来た。

何とかエンジンの再始動までは漕ぎ着けたが低回転域での失火や始動性の悪さに納得できない。

一度エンジンを完全に暖機してから原因や対策を考えるべきだが、外は既に薄暗くなってしまっていた。

 

4基仮組 位置関係などを再確認


              

オシメ(新聞紙)が濡れているのは・・・?



 

キャブレターの仮組を終えて次の週末はV-Boostユニットを外してみたいと思っている。

それは今回、最も興味深い部分でもある。

6,500rpm以上の回転域での“背中を押されるような加速”は今から楽しみだが、ひとつ疑問が湧いた。

例えば6,000rpm程度で走行中にシフトダウンした場合、回転数は上がる事になる。

それはエンジンブレーキによる減速を期待したのに、逆に加速する状態になるのではないか・・・。

何もかにもが走らせてみなければ分からない事だらけで、それこそ興味津々。

ただ、このVMX12で不名誉な記録更新は避けたいと思っている。

まだまだこれから

憧 憬 の 轍

 

2023317日 まだまだこれから

 

明日から気温が下がり春分の日20日前後は降雪の予報も出ている。

再び暖かくなるのは次の週末からのようだ。

しかし九州方面では桜が咲き始めるらしい。

当地の開花予想は4月20日頃らしいが、ひと昔よりも半月以上早く咲く事になる。

今年も桜前線が北へ向かって駆け上がる季節になった。

昨年の4月初め頃、所用で訪れた弘前で見た胴吹き桜は、今年もさらに早く咲くのだろうか。

 

 

 

昨年の11月、新しいバッテリーを繋いでスタータースイッチを押した時、エンジンは簡単に始動した。

ただアイドリングはメーター読みで約3,500rpmだった。

スロットル調整スクリューを回して規定値の1,000rpm付近まで下げることが出来た。

邪推ながら3,500rpmのアイドリングは、スタータージェットだけでなくメインジェットによるものだったと思う。

 

キャブレターを完全に分解し、いわゆる消耗部品を全て交換する事にした。

懐具合は一気に氷点下まで下がったが、そんな事には慣れている。

単に整備するだけでなく製造された当時の状態に戻したかった。

エンリッチャーのダイヤフラムは破れもなく汚れを落とせば使えるレベルだが交換した。

スロットルのバタフライバルブにしても燃調の悪い状態で走って来たのだと思う。

 

 

バタフライバルブ 汚れを落とす 歪みは無い


       

 

 

エンリッチャーのダイヤフラムは交換



 

フロートバルブの交換に伴いバルブシートも一緒に交換したいが簡単に外れそうにない。

キャブレター本体の外側から差し込むように作られていて、真鍮製のキャップで蓋をする。キャップの周囲にはご丁寧にポンチが打たれていた。

Oリングも入っているのでせめてねじ込み式に作られていればもっと整備性が良かったのに・・・。

CLYMERのマニュアルではこのキャップをdrill outすると書かれているが、バルブシートを交換するので内側からキャップごと叩き出した。

 

 

せめてねじ込み式なら楽なのに・・・


             

 

 

叩き出したためストレーナーが潰れたバルブシート



 

1985年のデビューから2007年の生産終了までの間に、ほぼ毎年マイナーチェンジを繰り返して来た。

カラーリングなどの外装については興味が無いが、エンジンの特性や出力に関しては興味津々だ。

集めた資料によればアメリカ仕様(2WE)は1996年にキャブレターのセッティング変更によって145psから140psになっている。

具体的な変更内容は分からないがカナダ仕様(2LT)との違いはジェットニードルとパイロットスクリューの戻し値だけだ。

V-Boostシステムのプログラムまで変わっていれば話は別だが主な変更内容はこのジェットニードルとパイロットスクリューの戻し値に関係しているような気がする。

5psの差に拘りは無かったはずなのに新しい部品を組み込むとなれば気になる5psだ。

横置きのキャブレターなのでジェットニードルは簡単に交換することが出来る。

いずれカナダ仕様(2LT)用の5EZ50に入れ替えてみる事までも考えている。

即時に交換しなければならないのは自身のクラッチやブレーキなのかもしれない。

 

 

追記 3月20日 やっちまったぜ・・・

解体してクリーニングを終えたVMX12のキャブレター、MIKUNI BDS35。

3番と4番の再組立てを始めた。

ジェット類やOリングなどの消耗部品は社外品ながら格安な物を見つけ、とりあえずは順調なつもりだった。

製品は国産との振れ込みだったが精度が悪い。

例えばジェット類、ねじ込む時に妙な抵抗がある。

そうかと言ってねじ込めない訳ではない。

さらに付属していたビス類は長さが僅かに違っているが、繰り返されたマイナーチェンジと無関係ではないかもしれない。

さらに多くの輸出用モデルは仕向地ごとに仕様も違っている。

それでも径とピッチは合っているので長い物は切り詰めることも出来る。

HONDAのパーツリストのようにビスやボルトは径や長さを、Oリングやオイルシールについてもサイズが書かれていればいいのだが、YAMAHAのパーツリストには部品名しか書かれていない。

 

4基分セットの1基分



 

キャブレターのメンテナンスキット、燃調セットと言えばK社の製品が広く知られている。当然K社の製品を考えていたが価格は4基分で約2倍だった。

しかし今、セット内容を見直せばK社の製品にするべきだった。

「安物買いの銭失い」。

今やジャミフレンズの総領とも言うべき『JAZZのタカ(自称)』の得意技を自分もやらかすとは・・・。

ところで彼のJIMNYは見かける度に怪しさを増していて目指す方向がまるで見えない。

今回購入してしまったセットに付属していない部品もK社の製品は含まれている。

それらの純正部品を検索してみたが、結果は傷口に塩どころではなかった! 

外径6㎜程度のOリングが約900円也! 

スロットルバルブに至っては約25,000円って、こんなモンを4基分揃えていたらキャブレターのオーバーホール代で中古のバイク1台買えるべよ!!! 

それでもやらかしちまった事は仕方ねぇ・・・、と言うワケでクソ高けぇ部品を1個ずつ買って、Oリングは以前世話になった専門店に持ち込んでみようと考えている。

そんなメンテナンスキットだが、ガスケットに関しては外国製品によくあるビス穴の位置が違ったり、形状自体が違ったりする事は無かった。

騙されたとは思っていないし、クレームを付ける気もない。

ただ気にくわねぇ・・・。

本当にMade in Japanならモノ造りの誇りを忘れるんじゃねぇぞ!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

編集長のおーまーけー

3月例会開催しました~

 

 

春より速く

憧 憬 の 轍

 

2023310日 春より速く

 

春のような冬と冬のような春。

3月に入ってから肌寒い日が続いている。

天気は良くても風が冷たい。

2月下旬の時ならぬ陽気に「今年は春が早いかも知れない」などと思ったものだが、期待外れだったようだ。

地方版のニュースでも卒業式が報じられ、全国版のニュースでは早くも桜の開花予想が報じられているが、昨夜の粉雪が春はまだ遠いと言っているようだった。

 

 

 

 

走り出してしまったアタマのブレーキは古びたドラム式だったばかりか、ほぼブッ壊れていたらしい。

そんなアタマで本来の作業予定などを考えても今度は思考回路のクラッチが滑ってしまう。

元来不器用な者が複数の事を同時進行させようとする事が間違いなのだ。

そればかりか春めいてきたとは言え、日中の最高気温は3℃程度。

こんな温度の中でKSR-Ⅱのフレームやスイングアームを再塗装しても満足な結果は得られない。

そこでもう少し暖かくなるまでKSR-Ⅱの作業は延期してVMX12のキャブレターに手を付けた。

4基のMIKUNI BDS35は70°V型4気筒エンジンのシリンダーに挟まれたように納まっている。

趣味でバイクのレストアを始めて以来、幾つものキャブレターに手を付けて来たが、V-Boostシステムが絡んだキャブレターに手を付けるのはおそらく最初で最後だろう。

 

フィルターを外したエアクリーナーボックス内


        

ボックスを外した状態

 

キャブレター本体とマニホールドをつないでいる樹脂製部品に硬化は少なく、潤滑剤を使って簡単に外すことが出来た。

単なる4気筒ならシリンダーヘッドとキャブレターがそれぞれつながっているだけだが、V-Boostシステムのために前後のマニホールドもつながっている。

最も興味深い部分だが、まずはキャブレターに専念する。

 

外したBDS35 4基


                       

ユニットの前後を間違えそうだ

 

キャブレターは横置きなので縦置きに比べてフロートチャンバーに残っているガソリンは少ない。

それでも4基分となるとそれなりの量になる。

1基ずつドレンボルトを開けてみたが、中は錆だらけだった。

 

排出したガソリン1基分 いわゆる“錆色”


         

予想通り・・・

 

チャンバーの底に溜まっていた錆は予想通りだったとしても、合わせ面にはみ出していた黒い液体ガスケットやネジに付いている傷からこのキャブレターはこれまでに何度か手が付けられている事が分かる。

Oリングは既に断面が4角で硬化も進んでいた。

ジェットブロックやジェット類の詰まりや汚れも然ることながら外見上も気にかかっていたのがエンリッチャーの中のダイヤフラムだった。

ダイヤフラム自体に傷や破れは無かったがスプリングの錆や汚れは想像以上だった。

 

エンリッチャーのカバーを外す 


               

ダイヤフラムは交換だな・・・

 

キャブレターは解体を進める度に溜息がでる。

チャンバーと本体の合わせ面のOリングだけでなく、思いのほか多くの交換部品が必要になりそうで、懐にも冷たい風が吹く予感に震えている。

キャブレターのメンテナンスキット(Oリングやガスケット類、ジェット類のセット)の値段は調べる間でもなく予想できるので、しばらくはクリーニングに精を出すことにした。