憧 憬 の 轍

 
憧 憬 の 轍
 
 
2016110日 新しい年の初めに
 
 
 
決して良い事ではないと思うのだが、
 
なんとなく年が明けてしまったような気がする。
 
年末年始の休みを利用して
 
何かの予定でもあればよかったのかもしれないが、今回は何も無かった。
 
既に仕事は始まっているものの、
 
10日、11日の連休のせいで正月休みが終わったような気がしない。
 
 
昨年末に点灯試験をしたColemanのランタンの修理を再開。
 
点火はするが燃焼が安定しない状態だったので
 
各部を再確認してみるとバルブステムのパッキンが割れていた。
 
解体時にボロボロと砕けるように崩れ落ちたので、
 
固化したグリス(モリブデングリスの色にソックリ!)かと思ったが、
 
素材はグラファイト黒鉛)のようで
 
近場のアウトドアショップで見かけた記憶は無い部品だった。
 
古いバイクの部品も根性で探せば見つかる事は分かっている。
 
値段は「ふざけんじゃねぇ!」って叫びたくなるけど。
 
ランタンの部品はすぐに見つかり、良心的な価格だったので、
 
昨年末に即注文してあった。
 

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グラファイトのパッキン                     Oリングでも入っているのかと思っていた
 
作業自体はバイクのエンジンを組み立てることに比べれば単純な作業だが、
 
問題はその後、燃焼が安定するかと言う事だ。
 
どうやらジェネレーターも交換しなければならないようだが、
 
とりあえず使える。
 
1ℓで約1,400円もするColeman印のホワイトガソリンを買って来て
 
再び燃焼試験。
 
それにしても腹立たしいのはこの値段だ。
 
クルマに使うハイオクでさえ1ℓ=200円以下なのに! 
 
工業用のホワイトガソリンなら、
 
18ℓ、いわゆる一斗缶で5,500円程度らしいので、
 
この件は後日、「鬼殺しのチュウ」に相談してみようと思っている。
 
ガソリンランタンの灯りとそこに醸し出される雰囲気は
 
LEDなどの電気系の照明がどれほど明るくても作り出せるものではない。
 
 

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なんとか使えるようになった220-J                   XL125の部品も届いた
 
このランタンをバイクに積んで
 
キャンプツーリングに出かける事は絶対に無いと思うが、
 
こうして使える状態になると持ち出したくなるのが人情と言うもの。
 
この季節にそんな事を考えていると
 
 
「冬だってキャンプ出来るべ」って話がすぐに飛び出す。
天気が悪ければ車中泊と言う逃げ道もあるし。
 
昨年の11月、福島・会津地方へ出かけた際に実感したのは
 
クルマの可能性だった。
 
キャンプ場は閉鎖されていなかったが
 
前日に降った湿雪でテントを張る気になれず、
 
結局温泉のある道の駅で車中泊した。
 
 
今後、バイクに乗れない季節にも出かける事を考えると、
 
このランタンは外せない道具になりそうだ。
 
ランタンの部品と共に届いたのは初期型XL125の部品。
 
待ってました! 
 
「メーカーに残っていた純正部品を掻き集めた」って感じだった。
 
 
フュエルコック4つ穴パッキンやヘッドライトステーのクッションは
 
“メーカー在庫○○個”とプレッシャーかけられまくり状態だったので、
 
2個で足りる部品も4個注文してスペアパーツとしたつもりだが、
 
請求書を見た大魔神O氏は、「このバイクに死ぬまで乗ってろってか?」。
 
 
「もちろんそのつもりでレストアしてます! C92もね」って即答。
 
その後、他の車種の部品ながら寸法が同じで共用出来る物と一緒に
 
当時物のタンクマーク、
 
いわゆる「Old HONDA Wing」も届いて、
 
一気にこの冬も始まったって感じ! 
 
ひと昔前ならスキー場でスピード違反している頃なんだけどなぁ・・・。 
 
歳と共に人は変わるんです!
 
 
届いた部品を確認しながらどこから手を付けようかと考えていたが、
 
まずはフロントフォークから。
 
エアクリーナーボックスやメーターステーは
 
錆落としや再塗装しなければ新しい部品の出番は無い。
 
メインハーネスやスイッチ類の点検、
 
そして何よりの懸念事項、
 
エグゾーストパイプを探し出さなければならない。
 
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フロントフォークを組立てる前の記念撮影              ハーネスを合わせるためにタンクは外した
 
 
届いた純正部品のひとつにタンクのクッションがある。
 
バイクのタンクはシートとの合わせ部分で
 
ボルト留めされているものが一般的だが、
 
このバイクのタンクを止めているのはゴム製のクッションのみ。
 
75年型の旧CB400Fourも同様だがゴムが硬くなると
 
すぐに切れてしまうのが難点。
 
何度もタンクを外さなければ良い訳だが。
 
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まだ純正部品が出た                           硬くなるとすぐ切れてしまう
 
 
 
 
 
閑話休題 新年早々の脱輪、一発目
 
「樵の巨匠」の手元にあるモデル名不明だったColeman
 
ランタンの事が分かってきた。
 
あるコレクターに写真などを見せたところ
 
220-B、または220-Eをベースにした
 
”Aladdin Conversion ArmyLantern”
 
らしいが疑問も残る。
タンク裏面に打刻された数字は2と7。
 
19427月製造を意味し、この年代に作られていたのは220-B。
 
しかしジェネレーターの側には
 
Aladdin Conversion 1944」と打刻されている。
 
この2年の差は何を意味しているのか? 
 
単に1942年製の在庫に2年後Aladdin社の部品を組んだと言う事なのか? 
 
それとも持ち主がまったく別の理由でタンクを付け替えたのか? 
 
 
1944年と言えば第二次世界大戦が終わる前の年だ。
 
そんな時代に軍用品として作られた物がこうして残っている事と、
 
この街が基地の街である事は容易に結びつく。
 
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ランタンの後に見えるのも軍用の古いストーブ             ALADDIN CONVERSION 1944の打刻
 
 
一般的に”AladdinConversion Army Lantern”1944年製で、
 
当時作られていたのは220-E。
 
さらに220シリーズは全てツインマントルだが
 
このランタンはシングルマントルだ。
 
 
コレクターの話によるとColeman社は
 
イギリスでの特許も既に取得していて、
 
Aladdin社から部品供給を受けて軍用品を量産していたらしい。
 
Aladdin社が供給した部品がシングルマントル用だったので
 
モデルナンバーが無いと言う話や、
 
軍用としてはシングルマントルの方が
 
使い易かったと言う話もあるらしいが、
 
このランタンが
 
Army Lantern”または“Military Lantern
 
と呼ばれている事は間違いないようだ。
 
そして状態がさほど良くないモノでも、
 
コレクターの間では新品のランタンが買えるほどの値段で
 
取引されているとの事だった。
 
古いバイクのレストアをしていると
 
エンジン部品の内側に書かれた意味不明な数字や、
 
下請工場のスタンプや日付入りの検印を見つける事が度々ある。
 
さらに修理の跡や明らかに新しい年代の部品が
 
上手く使われていたりするのを見て、
 
人の人生を見ているような気持ちになる事がある。
 
今回のランタンは「樵の巨匠」の父親が昔に入手した物だが、
 
それまでの経緯を思うと出来る限り
 
使える状態を保たなければならないと思った。