憧 憬 の 轍
2020年8月23日 今年も
気象庁が「梅雨明け宣言」を出さなくても、
ちゃんと東北地方北部にも夏は来た。
今ひとつ勢いの無かった太平洋高気圧もチベット高気圧と二段構えになって各地で猛暑日を作っている。
「猛暑日」と言う言葉を頻繁に耳にするようになったのは近年の事で、
「真夏日」とか「夏日」と言う言葉にもひと昔前はなじみが薄かったと思う。
むしろ「真冬日」と言う言葉に敏感だった。
朝方の空模様は陽が高くなるにつれて変わった。
気まぐれに一人出かけたのは八戸市南郷の「山の楽校」。
今年も200万本のひまわりと蕎麦の花が見頃だ。
「山の楽校」でも今年はCOVID-19のせいで予定していたイベントの多くが中止になった。
それでも花は咲く。
まったく何事も無かったかのように咲いていた。
この畑を作るために「あらおこし」と呼ばれる焼き畑方法が用いられる。
古く南郷では当たり前の農法だったが文献や資料はほとんど残っていない。
手間のかかる割には収穫量の少ない非近代的な農法だが、
無農薬・無肥料で作物を育てるには最適な農法かも知れない。
「山の楽校」は明治36年に文教所として開校し、
平成14年に廃校になった旧増田小学校の校舎を利用し、
世増ダム(青葉湖)に沈んだ地域の文化を残すための施設でもある。
信号待ちの間に背中にかいた汗も走り出せば気持ちよく引いていく。
そして日が暮れる頃には涼しい風が吹く。
夏祭りも無く、外出にも気を遣う“特別な夏”が終わろうとしている。