憧 憬 の 轍
2019年12月3日 路傍の石
以前にも古いバイクのレストアだけが趣味ではないと書いた記憶がある。
写真やカメラも、鄙びた温泉巡りも、安くて美味い食事処を探すのも、古い建物を見て回るのも趣味的な楽しみだ。もちろんそれらだけではないが。
ものの見方を少し変えるだけで世界は昨日まで知らなかった楽しみに溢れていると思う。
そしてその原動力は尽きる事を知らない好奇心に他ならない。
今年4月に30年来愛用して来た腕時計のキャパシタ交換に成功してからSEIKO AGSの再生も趣味的な楽しみになっている。
ただ古い時計とは言え状態の程度の良い物は高額で取引されている事が悩ましい。
時計マニアからすれば実に初歩的な作業に自己満足しているだけなのだろうが、以前、AGSの機構を知るために超安価で入手し、解体したジャンク品の組み立てにやっと成功した、と思う。
確実に発電と充電が繰り返されなければ成功とは言えない。
それを確かめるためには今暫らくの時間が必要だ。
ルーペ越しの作業は視神経ばかりでなく指先の神経にまで気を遣う。
1mmにも満たないビスの締め込み具合や、長針と短針と秒針のクリアランスに思わず息を止めてしまう。
TAITNIUMとだけ打刻されたケースと文字盤が部品ストックにある。
「TAITNIUM Alloy」と打刻されたモデルや「TAITNIUM STAINLESS STEELBACK」と打刻されたモデルもあるが、「TAITNIUM」とだけ打刻された裏蓋が拘りだ。
さらにTAITNIUM製のベルトも。
これを使ってもうひとつ・・・、
既に街用、山用、海用として同じ時計が3個あるが4個目はバイク用?
もうこれは、いや、もうこれもひとつの病気と言わなければならない。
いわゆる“悪い病気”の病原体は菌やウイルスではなく、脳内で麻薬のように発生する好奇心だと思った。
本物の麻薬中毒になってしまったら人間を辞めなければならないが、「好奇心」と言う脳内麻薬に侵されているうちはまだ救われているはずだ。
ぐるぐると回り続ける羅針盤が方向を示す事も出来ずに、今夜もただ回り続けている。