憧 憬 の 轍
2021年6月23日 新たなパンデミックの予感
一時期、作業場に蔓延した「ストーブ病」は春の訪れと共に下火になっていた。
PERFECTIONだ、Aladdinだ、日本船灯だ、BARLERだと多くの変異株が発生したが、
「ストーブ病」の根源とも言うべき『樵の巨匠』は相変わらず火遊びをしている。
レストアを終えたTLR200で休日ごとに林道や川原に出かけ、
古いColemanのストーブで湯を沸かすのが楽しいらしい。
そのストーブはM-1942 Modelと呼ばれるもので古いアメリカの軍用品。
彼の手元にはColeman Model 527G.Iもあるが、
いずれも今は亡き父上から譲り受けたものだ。
現代のストーブに比べれば性能は語るほどのものではないとしても、
ステンレス製のコンパクトな造りや鍋にもなるアルミニウム製のケースなどは軍用品然としてマニアにはたまらない魅力がある。
実はメンテナンスを繰り返して常用可能になったM-1942の他に、
一部の部品が欠品したM-1942もあった。
『樵の巨匠』の父上は部品取りのつもりで保管していたのかもしれないが、
この際、これも再生しようと言う話になった。
最近はCOVID-19の影響もあってキャンプ人口が急増している。
そのためか古いColemanを専門に扱う店も増えているが、
どこを探しても必要な部品は見つからなかった。
当然のごとくアメリカをはじめとして海外のオークションサイトを漁った。
そしてジャンク扱いのM-1942が見つかってしまった。
BUY IT NOW!ってか?
そしてIndiana U.S.Aから届いた小包には興味のない人から見ればただのガラクタ、
見方によっては「燃やせないゴミ」が入っていた。
一時期、火炎放射器のような勢いで数台ものPERFECTIONや部品を買い漁った『大魔神・O氏』によって何度も発令された「Operation California in Snow」が、
今回は『樵の巨匠』から発令されたのだった。
それが届いたのだから、
もうどんなに忙しくても仕事なんて後回し。
アメリカ在住のコレクターから得た情報によれば、
M-1942は1942年から1945年までの3年間だけ生産されていたストーブだった。
第二次世界大戦が勃発し、
米陸軍はAGMとColemanに野戦用の小型ストーブを発注した。
-50℃から+50℃までの環境であらゆる燃料を使える事と、
1ℓの牛乳瓶よりも小さな物であることが条件だったと言う。
そして開発されたストーブはM-1941(Colemanの型式では520)と呼ばれ、
後継モデルとして開発されたのがM-1942だと言われている。
これを機にColemanはストーブやアウトドア商品のメーカーとして急成長するが、
このM-1942を生産していたのはイギリスのAladdin社だった。
憶測の域を出ない話だが当時のColemanは軍が求める数量をこなせるだけの設備が無かったか、
あるいはランタンの技術はあってもストーブに関してはAladdinを頼らざるを得なかったのではないか・・・、
とも言われているらしい。
さらに『樵の巨匠』のM-1942 にはMODの刻印がある。
このMODの意味はプロトモデルを意味するらしい。
ColemanはこのM-1942の後継モデルのM-1950から本格的に製造を始めるが材質などが大きく変わっている。
そう言えば2016年1月頃、
再生していたColeman 220-B、
あるいは220-Eをベースとしたランタンもバーナー部分にAladdinの刻印があった。
U.S M-1942 MODの打刻の下にPW-1-45やCA-1945の打刻も読み取れる。
これが何を意味しているのかは分からない。
そのため憶測と邪推に満ちた話でさらに盛り上がってしまう。
燃焼音の割に燃焼効率は高くない(あくまで大ブス=Phoebus 625に比べて)がコンパクトに仕上がっているため落下傘部隊にも採用されたM-1942。
話としてはそれだけで十分なはずだが偶然見つけたM-1941の画像にはALADDINの打刻があるとか、
タンクの造りが暖房用のALADDINのストーブと同じだとか・・・。
こんな古いストーブ1台で軽く一晩酒が飲めそうなほどに盛り上がってしまう。
オリンピック/パラリンピックを目前に控えCOVID-19のワクチンの接種率は日々伸びているようだが、
ストーブ病にはワクチンも特効薬も無いし出来るはずも無い。
梅雨の時期、ツーリングにもキャンプにも行けずにいる間に作業場は新たなパンデミックに見舞われるのだろうか。