憧 憬 の 轍
2022年4月10日 因果律
昨日から風が暖かい。
慣れたはずのマスクに暑苦しさを感じる。
つい先日まで雪に追われていた駐車場にも新しい草が芽吹き、日々の雪かきが草刈りに変わる。
この冬も雪は多く寒かった。
月末に控えた大型連休の事もあって、過ぎた冬の事など既に忘れている。
先週末からW1エンジンの電装系に着手した。
固まりかけている古いプラグコードはシリコン製にしたがプラグのキャップは当時の物を再利用して“古臭さ”を残すことにした。
マニュアルに従いイグニッションコイルの一次側、および二次側の抵抗を測ってみると二次側の抵抗が許容値を下回っていた。
10kΩ±10%に対し、8.6~8.9kΩ。
変化するのは気温のせいだろうか。
それでも問題なくプラグはスパークするし、腰上をバラす前に難無くエンジンは始動していた。
1次側の抵抗値が狂っていると様々なトラブルを招くようだが、2次側についてはこの程度なら問題ないと言う話もある。
2次側については抵抗値よりも絶縁状態の方が重要らしい。
相変わらずの電気パッパラパーなので判断に迷っている。
もちろんイグニッションコイルも新品に替えるのが最良だとは思うが純正部品はおそらくもう出ない。
後期のW1には2個のイグニッションコイルが使われているが、この車両は1個だ。
オークションなどに出品されている物は外見上きれいでも中身はよく分からないし、リプレイス品も同じくらいの価格で売られている。
とりあえず今回はこのまま使って様子を見ながら、リプレイス品の購入を考える事にした。
電装系に手を付けるにあたっては配線図が必要だ。
手元にある復刻版のマニュアルには掲載されているが、所詮は古い資料のコピーで、さらに縮小されているため見難いばかりか配線の色が読み取れない。
こんな時、頼りになるのはインターネットだ。
国内のサイトでは見つからない資料も海外のサイトでは容易に見つかる。
結果、労せずにカラー版の配線図が見つかった。
これも情報公開に対する考え方の違いなのだろうか。
マニュアルに従って作業を進めれば今後、コンデンサーなど心配な部分が次々に出て来ると思う。
電装部品は何の前触れも無く突然に壊れるし、特殊な計測器が無ければ判断出来ないものが多い。
そんな分野の知識も無ければ道具も無い。
それでもとにかく新しい物に替えておけばいいとは思いたくない。
W1もC92も新しい燃料ホースを準備しなければならない。
出来ればフッ素ゴム(FKM)のホースを使いたいと思い、調べてみると幾つか種類がある事を知った。
どれも安くない。
素材自体が5,000~20,000円/㎏って、クロマグロやA5ランクの和牛じゃねぇって・・・。
格安な物を探すしかないのだが、材質を明示している商品は少ない。
実は超格安の「フッ素ゴム」と謳った商品を買ってみた。
間違いなく日本海の向こうで作られた物だろう。
これは既にギャンブルに近い行為だ。
内径は5㎜で外径が8㎜。
すなわち長さ1,000㎜あたり30,630.5㎣のゴムが使われている事になる(π=3.14で計算)。
FKMの比重は1.8~1.82なので重量は約550g程度のはずだが 1,000mmあたり428gだった。
よって比重は1.35程度。
多硫化ゴム(T)の比重は1.34~1.41なので、もしかしてこれか?
もし多硫化ゴムなら耐ガソリン性は◎なので燃料ホースとして使えないことは無い。
燃やして見れば炎の色や煙の色や匂いで違いが分かるかもしれない。
しかし有毒ガスが出る事必須なので、これは間違いなく健康的に良くない方法だ。
パッキンやOリングやオイルシールやガスケット、素材の種類まで探ると出て来る単語はゴム、エストラマー、熱可塑性エストラマー、プラスチック、樹脂・・・。
化学式や元素記号まで出て来る。
小さな脳ミソの許容範囲をはるかに超えた情報量に右往左往どころではない。
専門分野は宇宙空間並みに奥が深い事を思い知らされて本来の目的さえも見失いそうになる。
それでも好奇心は尽きない。
ところで先週末に緊急入院した『サンちゃん』ことS氏のKSR80だが、オイル漏れの原因は古くなった2ストロークオイルのパイプに出来たクラックだった。
オイルポンプとの接合部分だったのでパイプを少々切り詰めて解決した。
また燃料漏れはキャブレターのオーバーフローによるものだった。
この車両はサイドスタンドが短く停車時の傾きが大きい。
狂っていた油面高を規定値よりわずかに下げてこれも解決。
そんな事よりも問題だったのはタンクに溜まった水だった。
混入したゴミと一緒にフロートチャンバーの中で「ケムンパス」が育っていた。
2016年9月下旬、十和田湖近くの峠でこのバイクは走行不能になった。
当時のオーナーだった『特攻隊長』の過激なアクセルワークに耐え切れずコンロッドのベアリングは破損し、新しいベアリングと0.5mmオーバーサイズのピストンで復活した。
その後、新しいオーナーとなった『サンちゃん』ことS氏は見事にオイルポンプをフッ飛ばし再びのボーリング加工、ピストンは1.0mmオーバーサイズに。
ブチ回してナンボの2ストロークなのは分かるが次はもう無い!
次はエンジンを載せ替えるしかない!
さらにチャンバーやホイールには錆が目立ち、外装も劣化が激しい。
次のオフシーズンには外装を含めてフルオーバーホールする事を強く具申する!
明日からはさらに気温が上がるらしいが、それも週の中頃までとか。
まさに三寒四温の日々、風の匂いも毎日変わる。
ちっぽけな杞憂をあざ笑うかのように花の蕾は膨らみ続けている。