憧 憬 の 轍
2017年 2月 24日 Am Em F E7sus4 E7
「いちご白書をもう一度」。
1975年のヒット曲。荒井由美(松任谷由美)の楽曲をバンバンが歌った。
映画「いちご白書(原題The StrawberryStatement)」は
作家James Simon Kunenによるノンフィクション、
コロンビア大学での1966年から1968年頃の学生運動の体験を著したものだ。
同書を元に映画が作られ、
「イージーライダー」や「俺たちに明日は無い」などと並ぶ
アメリカン・ニューシネマの代表作となった。
高校生だったあの頃、学生運動の実態を知る術も無く、
憧れにも似た妄想だけがそこにあった。
O君の前の席に座っていたK子さんは授業の合間に突然振り向いて彼の名を呼んだ。
悪いけれどK子さんは地味で口数の少ない女の子だったからO君は驚いた。
差し出されたノートに書かれていた歌詞、
その文字があまりにも綺麗で彼は二度驚いた。
♪ふたりだけのMemory どこかでもう一度♪
彼女は歌詞の中の“Memory”が聞き取れなかったらしく
「眠り?」とそこには書いてあった。
レコーディングの際に“Memory”の発音に
何度も荒井由美がダメ出ししたと言う話を聞いたのはその数年後の事だが、
K子さんはまさか英単語が混じっているとは思わなかったらしい。
後日、K子さんからは、
「恥ずかしい話なので、その事は“ふたりだのMemory”にしてください」
と綺麗な文字で書かれたメモを受け取った。
数年前に頂いた暑中見舞いの片隅に、
「今でもカラオケで必ず歌うのはあの歌です」と書かれていた。
O君も「飲むと必ず歌いたくなるのはあの歌、”Memory”です」と返した。
O君は学校をサボって映画を見に行った事が何度かあったが、
いつも一人で観に行っていた。K子さんを誘えばよかったのかもしれない。
Y子さんは誘っても来てくれなかった。