憧 憬 の 轍
2018年5月20日
月日は百代の過客にして行きかふ年もまた旅人也(松尾芭蕉)
本当に行きたい所へは独りで行くべきだ。
行きたい気持ちに迷いがないなら、
なおさら独りで行かなければならない。
そして行きたかった理由や目的を再確認する。
そんな旅がしたい。
いつも、いつも遠い旅を夢見て来た。
そろそろ急がなければならないのかもしれない。
先週末に試走させる予定だったJC58、
オーナーの大魔神・O氏の元に返す前に気がかりなのは
スピードメーターとフロントブレーキのワイヤーだ。
この際はっきり言うがブレーキのワイヤーはいつ切れてもおかしくない。
帰り道でワイヤー切れた→止まらない→衝突!
では笑い話にもならないので中身だけをステンレス製のワイヤーで作り直す事にした。
ワイヤーの“タイコ”部分側面にある小さな凹みと材質は初めて見た時から気になっていた。
一般的に古いバイクでもタイコ部分は鉛が使われている。
対してJC58は真鍮だった。
真鍮の丸鋼に溝を切り、
二股に開いたワイヤーをハンダで留めてある。
鉛と違ってワイヤーが切れても再利用が可能だが溝にワイヤーを納めるのが少々難しい。
気にかかっていた“タイコの溝”
バーナーで炙って簡単に外れた
二股に分けるのが難しそうだ
ワイヤーだけ新しい
これまでワイヤーの再生は短く切った鉄やステンレスのパイプに穴をあけ、
ワイヤーを差し込んでハンダで固定していたが、
今後はこの方法を活用しない手はない。
真鍮や銅の丸鋼はホームセンターなどでも簡単に手に入る。
まさしく「温故知新」だ。
スピードメーターのワイヤーもストックしてある物の中から
メーターギヤに合致するコネクターの付いた物を探し出した。
他の部分に合わせて黒色のチューブに替えれば済むと思っていたが、
メーター側のコネクターが特殊だった。
JC58以後、このような形状は使われていないようだ。
肌寒かった昨日とは打って変わって今日は暖かく試走に最適だ。
スピードメーターのワイヤーについては対応策を後日考える事にした。
メーターが動かなくても、
ブレーキと違って直接事故に結びつくようなトラブルが起こるとは考えにくい。
走行可能とは言っても何が起こるか予想もつかないので試走は作業場の周辺、
「町内1周ツアー」に留めておいた。
およそ半年ぶりに太陽の下に出した車体の錆具合は屋内で見るそれとはまた違って見える。
左;1959年型C92 右;JC58
外で見るとやっぱりすごい
試走終了 走行距離約10㎞
次回はもう少し走ってみたい
試走後にエンジンを見るとオイルや燃料ホースのバンジョーボルト部分に滲みが見られる。
ガスケットを全て交換しなければならない。
最も心配なのは燃料ホース、ステンレスメッシュで覆われているが、
中のホース自体にクラックが出ているかもしれない。
「錆と言う名の星霜を纏った」還暦マシンをこのままの状態で維持するのは
想像以上に難しそうだ。
遠くに見える八甲田の山並みは6月を目前にして、
なおも稜線が白く青空に映えている。
そんな景色を見ていると梅雨の予感とは裏腹にどこかへ行きたくなる。
次の週末は5月最後の週末だ。