憧 憬 の 轍
2019年6月16日 雨の匂いに
予報では、昨夜は暴風雨の可能性もあったが、心配するほど天候は荒れなかった。
ついに北東北も梅雨入りし、ある意味では冬よりも鬱陶しい季節の到来だ。
作業場の窓は南向きだが、大きな木に日差しは遮られて午前中は日が入らない。
6月も半ばだと言うのに朝夕は建築廃材を燃やす薪ストーブ(廃材ストーブ?)の出番が続く。
CA105Hの“試乗用仮設スペシャル”を作業場の手術室から出すために、キャブレターのセッティングやフラッシャーの配線を終わらせたい。
オーナーの『大魔神・O氏』はこのままの状態で一度持ち帰得らなければならない理由があるようだが、まぁ、それも大人の事情として・・・。
予備のジェット類とニードル
配線はすべて仮設で リレーは某車両から借用
本来このCA105Hにはフラッシャーもフロントブレーキで作動するブレーキスイッチもない。
それで問題なかった時代の産物だ。
それでもフラッシャーが取り付けられるようにフレームが作られているのは、この車両が北米輸出用ながら国内用のモデルと共通だったからだろう。
ハンドルの左側にホーンとヘッドライトの切り替えスイッチが付いているだけで右側には何も付いていない。
「手信号」と言う方法もあるがバイクで手信号なんて理解できるのはおそらく50代以上、「あのカブのジジィ、何やってんだ?」と言われかねない。
フラッシャーのスイッチ、これでいいのか?
点灯試験
上の写真を見て気が付く人は気が付くのがスピードメーター。
MPH、マイル表示だ。車検が必要な排気量ではないが、日本の基準でスピードメーターはKm/h表示となっている。
HONDA SuperCubだけでなく、いわゆる横型エンジンについてよく知らなかったバカな整備担当メカニックとしては「今回も勉強させていただきました」と言わなければならない1台だ。
日本が誇る「世界のHONDA」の歴史はこのSuperCubから始まったと言う人が多い。
OHVと言う、まず間違いなく高回転向きではない機構ながら、求められる用途をほぼ完全に満たしたものが60年も前に作られていたのだから驚きだ。
こんなバイクを見て思うのは1ccでも排気量のデカいエンジンや、1㎞/hでも早く走れることや、1㎜でも遠くまで出かける事に、既に興味が無くなった事。
それらは幻想のような若い日の憧れのひとつだ。
あえて立ち止まったり振り返ったりしながら、そして自分が一番気持ちのいいペースでバイクに乗り続けたいと思う。
9月中旬に予定している“1泊ツーリング”は日本海側の深浦町方面へ。
天気がよければ海に沈む夕日が感動的に美しい。
宿泊予定地までのルートは2種類。
海岸沿いの国道を走るか、世界遺産の白神山地を貫くダートを選ぶか。
車種や体力と相談して決めなければならない。
しかし、そんな事よりも天気が気がかりなのは、この無人駅から沈む夕日を眺めてみたいと思うからだ。
ホームの先には日本海が広がる
ところで今日は父の日。
母の日にはカーネーション、父の日には?
花を貰って喜ぶ男はあまり多くないような気がする。
作業場に集まるメンバーもほとんどが家に帰れば父親だったり、あるいは祖父だったりする。おそらく普段作業場で見せている顔とは全く別の顔で、「家庭」と言う別な場所にいるはずだ。
次の週末は夏至、見上げた空がまだ明るかった。