平成の終わりと共に


憧 憬 の 轍



201935日 平成の終わりと共に


十和田観光電鉄。通称「十鉄(とうてつ)」。


2014年(平成24年)4月まで三沢市十和田市を繋いで来た。


国鉄の駅が無い十和田市三沢市を繋ぐ唯一の鉄路で、路線には二つの高校もあり、作業場に集まるメンバーの中にも通学のためにお世話になった者も少なくない。

 

鉄道そのものは既に無く、昭和30年代に改築されたこの駅舎だけが残っていた。


往時は三沢から十和田に向かう、あるいは十和田から三沢へ向かう通勤通学客で賑わっていた。


さらに子供の頃の記憶を辿れば駅周辺には数軒の旅館や商店が軒を連ねていた。


貨物列車が今よりももっともっと長かった時代の記憶だ。

 

交通体系の変遷と共に駅周辺の景色は一変した。


数軒あった旅館も今は無く、商店もその多くが閉店してしまった。


かつて鉄道が通っていた痕跡は残っているがレールはない。


そしてもうすぐこの駅舎の取り壊しが始まる。


イメージ 1
 
駅舎は2階建ての木造モルタル塗り。今ではなかなか見られない建物だ。

2階にあったレストランは閉店後、ゲームセンターになっていたらしいが長らく階段が閉ざされたままだ。

かつての切符売り場は鉄道に替わって運行しているバスの切符や定期券売り場として残っている。

そして何よりも特筆すべきは昭和39年からここで営業して来た「駅そば」だ。

 

最近、少々値上げしたが全国レベルで考えればまだまだ安い。


駅舎の解体に伴って一時的に仮店舗に移り、新しい三沢駅が完成したのちには再び駅に戻ると聞いている。


「駅そば」なのだから駅にあって当然だが、現在工事中の新しい三沢駅が開業するのは来年の春だ。

 

あらためて駅前の景色を眺めながら子供の頃の記憶に照らし合わせてみると、この駅舎以外はすべてが変わってしまっていた。


平成の終わりと共にまたひとつ「昭和」が遠のく。


そしてもうすぐ駅前から昭和の風情は完全になくなってしまう。