素顔の終結、弔い 番外編22

憧 憬 の 轍

 

202329日 素顔の終結、弔い 番外編22

 

国際郵便で届いた小包の差出人の欄には「終=始」と書かれていた。

住所や電話番号などの連絡先には意味不明な文字が書かれていた。

南米のグアテマラから発送されたその小包に一度開封された形跡があったのは、不審な郵便物と思われたからに違いない。

何もかにも分からないまま開けた小包からはコーヒーの香りがした。

そして古い本が出て来た。栞が差し込まれていた巻末のページの「昭和五十二年七月三十日 十八版発行」の記載がヒントのようにも思えた。

本のタイトルは「いちご白書」、カバーに使われている写真からこの本が映画化後の物だと判別出来た。

「いちご白書(原題 The Strawberry Statement」はアメリカ人作家 James Simon Kunenが書いたノンフィクションで、著書を元に1960年代の学生闘争を描いた映画が1970年6月に公開された。

その後この映画は楽曲や映像などに多くの影響をもたらした。

コーヒーの香りのする本は日本語で書かれ、日本で出版されたものに間違いはなかった。

ページを捲る度にコーヒーの香りをより強く感じた。

この本は「イントロ」、「余波」、「都会とその他の丘原の夏」、「追記」、「説明的注」、「結語」からの6章で構成されている。

読書中に不意に本にシミを作ってしまう事があるとしても、ページを捲る度にコーヒーの香りを感じるのが不思議だった。

あくまで憶測に過ぎないがコーヒー豆を焙煎する場所にこの本が置かれていたとしたなら・・・。

それは古びた記憶を辿る事に依るものだった。

書物を紐解くと言う表現があるが、記憶もまた紐解く物なのかもしれない。

 

 

何らかの理由で出国し7年以上にわたり音信不通の場合は失踪宣言を申し立てることが出来ると何かの本で読んだ記憶がある。

もしもこの本の差出人があの彼ならば、知る限りでは10年以上前に出国し、帰国した話は風の噂にも聞いていない。

彼の実家に電話して尋ねてみても行方知れずのままで、多くを話してはもらえなかった。

電話を切ってから私の憶測はほぼ確証じみたものになった。

 

大学の卒業を間近に控えながらも就職先が見つからず悩ましい日々を送っていた。

それは焦りでもあり、終日抱えた不安でもあった。

そこから飛び出すようにして彼は海外青年協力隊の一員として南米へ赴いた。

具体的な活動内容は聞いたような気もするが詳しくは覚えていない。

任期を終えて帰国した数年後、極めて個人的な理由で再び南米へ旅立ったままだ。

もしも彼の親族が既に失踪宣言を申し立てていたとすれば今後、彼が帰国できる可能性は極めて低い。

ただ私の確証じみた憶測が当たっているとすれば、彼はグアテマラの何処かで生きている。

古本。コーヒーの香り。

「終=始」と書かれた差出人の名前。

世界有数のコーヒー豆産出国のグアテマラ

おそらく彼は人知れずそこでコーヒー豆に携わっているのだろうと結論付けたい。

そして難解な暗号のようなこの本を、彼が愛した人の墓前に置いて来ようとも思ったが、黄色い革製の飾りが付いたキーホルダーと共に、火にくべる事にした。

それはかつて彼が彼女の日記を浜辺で燃やしたように。

 

立春

憧 憬 の 轍

 

202324日 立春

 

立春

いつもなら風に舞う粉雪を横目で見ながらの、暦の上だけの春だった。

2日前の朝に降った粉雪はこれまでに経験して来た2月を思い起こさせたが、既にほとんどが溶けてしまった。

風は冷たいが陽だまりは初春を思わせる。

もちろんこのまま春が訪れるとは思っていないが、雪が少なく温暖な冬の過ごしやすさを実感している。

 

 

 

 

当初の予定では熱を帯びた週末になるはずだったが、手配した部品や材料などが届いていない。

『スポカブ・ブラザース(弟)のGB250はカフェレーサー仕様に改造するために手配したシート、さらにシルバーに塗った外装に使うクリア塗料も次の週末以降の作業になる。

『若葉マークのS🔰』のBANDIT250に至ってはクラックを入れてしまったジェネレーターカバーがまだ見つからず、作業場の片隅に置かれている。

 

動かすとオイルが垂れる


            

 

何時までこの状態が続くのか…



 

そんな中で元気なのは「無謀な軽量化」に拍車がかかりっぱなしの『特攻隊長』くらいのものだ。

以前チェーンカバーを外したために冷却水のパイプの抑えが効かなくなり、路上に冷却水をブチ撒けた事があったにも関わらずカバーを戻そうとはしない。

鉄製のアングル材と針金で押さえていたが、今回はそれをアルミ材に替えた。

確かに鉄よりもアルミの方が軽いが、使ったのはVMX12のタコメーターを移設するために作ったメーターステーの試作品だった。

 

チェーンカバーを戻そうなんて思っていないらしい


    

 

今回もワイヤーリング・・・って、針金だべ!



 

『編集長』は自宅のガレージでZEPHYRχの腰上を洗浄し、バルブ合わせ面の確認に取り掛かろうとしている。

その後、再塗装の準備だが今後のスケジュールはかなり忙しいものになりそうだ。

そうは言っても手抜きは許されないばかりでなく、ここまでの作業を無駄にする事になりかねない。

そんな『編集長』に対してVMX12や『樵の巨匠』のBMW100Rは今のところ時間的な余裕があるが問題が無い訳ではない。

予定ではKSR-Ⅱの再生に取り掛かっているはずだったが未だにVMX12から手が離れないでいる。

キャブレターやエンジンの外装に手を付ける前にKSR-Ⅱのフレームを再塗装する予定は変わっていないが、アタマの切り替えがうまく行かない状態だ。

移設予定のタコメーターのステーは一段落したつもりだが納得できずにいるし、エギゾーストパイプの潰れを修正する手配もこれからしなければならない。

このままでは『編集長』以上に忙しい春が来そうな気がする。

 

今ひとつ納得のいかないタコメーター


             

 

この潰れを修正したい



 

タコメーターのステーに関しては以前買い揃えたアルミ用ハンダ(アルミ蝋)を使ってまったく別な物を作ってみたいと思っている。

ただ問題なのは材料を370℃程度まで熱しなければならない事だ。

位置や角度を決めるための治具が必要になるかもしれない。

またエギゾーストパイプはチタン製なので専門業者に依頼するつもりだが、修正方法によってかかる費用や仕上がり具合がかなり違うようなので、まずは見積もり依頼から。

 

しばらくは高気圧に囲まれるような気圧配置になるため晴れた日が続くようだ。

明日以降、関東地方では警報級の大雪が予想されている。

雪国で暮らす者からすれば笑ってしまうような降雪量だろう。

これまでにも何度か東京に雪が降ったニュースを観た。

むしろ笑ってしまうのは雪の量ではなく首都・東京の脆弱さだ。

 

 

手探りの先に

憧 憬 の 轍

 

2023129日 手探りの先に

 

1970年代の連続企業爆破事件を起こした過激派組織のメンバーで、唯一逮捕されていなかった男が入院先の病院でその身分を明かした。

そして「最期は本名で迎えたい」と話しながらも多くを語らぬまま他界した。

偽りの日々が始まってからおよそ50年。実に半世紀が過ぎ、事件は忘れ去れようとしていたし、事件そのものを知らない世代も今では多い。

もし仮に彼が身分を明かさないまま最後の数日を過ごしたとしたなら、あるいは書置きなどが死後に見つかったとしても、結局は本人以外の誰かが都合の良い辻褄合わせを語るだけだ。

真実を語ることが出来るのは本人しかいない。

捜査関係者の無念や50年に及ぶ逃亡生活の解明などについての報道はあるが犠牲者について、さらに犯行の根源となった思想に関する報道は少ない。

またひとつ、この国のジャーナリズムに疑問が生まれた。

 

 

 

 

 

 

オークションのウォッチリストがBMWの部品でいっぱいの『樵の巨匠』のもとにはタンクやバックステップなどが届いているが、どれもそのまま使えそうな物はない。

もちろんそれは承知の上だが・・・。

 

タンクが付いたか・・・ 


                     

 

反対側はこんな状態



 

タンクの潰れた部分にはワッシャーを溶接し、スライディングハンマーで引っ張り出す予定らしい。

さらにバックステップ(TZR用?)は大幅に加工しなければ使いモノにならない。

知らない人やレストアに興味のない人にはガラクタを集めて喜んでいるおかしなオヤジにしか見えないだろう。

 

ブレーキ側は仮合わせ中


                   

 

シフト側はこれから



 

おかしなオヤジは『樵の巨匠』だけではない。

これまでも「無謀な軽量化」を繰り返して来た『特攻隊長』もVTR250のタンデムステップに手を付けだした。

最初はバックステップが欲しいと言っていたので他車種のものを流用すると思っていた。

そのためには既存のタンデムステップのステーは加工次第で有効な部品だと思っていたが・・・。

 

タンデムステップは?


                      

 

スパッとやっちまいましたね~



 

VTR250のステップはピボットのシャフトでスイングアームと共締めされている。

シャフトは抜いてみるとグリスは残っていたが錆も出ていたので、当然メンテナンスの対象だった。

さらにサスペンションの再調整なども済ませ、走り出さないのが不思議なくらいだった。

 

ピボットのシャフトは予想通り 


                 

 

サスペンションの調整中


 

 

『編集長』はZEPHYRχの腰上を組み直すために部品のカーボン除去と再塗装の準備、『スポカブ・ブラザース(弟)』もGB250の外装の塗装を一段落してクリア塗装の準備。

そして尾の週末も遅々として作業が進んでいない『若葉マークのS🔰』のBANDIT250はジェネレーターカバーにクラックが見つかった。

 

 

次の週末を迎える前に1月は終わる。

本来なら真冬日が続いている頃なのだが、道端の雪はほとんどが溶けてしまった。

今年は春が早いのかも知れない。

 

 

牛歩

憧 憬 の 轍

 

2023121日 牛歩

 

真冬日がもたらした雪はその後の春を思わせるような陽気でほとんどが溶けてしまった。

2週間予報によれば、しばらくの間は冬日が続くが降雪量は多くなさそうだ。

記録的な寒波が続いた昨冬に比べて過ごしやすい。

北日本を縦に走る山々のせいで天気は太平洋側と日本海側とでは大きく違う。

時に真逆な事もある。

能登半島周辺の地域でもこの冬が“優しい冬”であってほしい。

 

 

 

VMX12の事を書くようになってから後輪のギヤボックスを何度か「デファレンシャル」と書いて来た。

しかし「デファレンシャル」は差動歯車の事でバイクの場合、対になる車輪が無いのだからデファレンシャルと呼ぶのは間違いだった。

正しくは「ベベルギヤケース」とか「ベベルギヤボックス」と言うべきだった。

改めてアメリカ仕様パーツリストを見ると「Rear Axle Gear Case」。

どこにも「Differential」とは書かれていない。

 

今後は「ベベルギヤケース」と呼ぶ事にした


        

 

パーツリスト 正しくベベルギヤケース



 

ダミータンク上にあるインジケーターのタコメータースピードメーターの横に移し、タコメーターがあった場所に燃料計を取り付ける事を考えている。

VMX12のタンクに付いているセンダーユニットは給油を指示する赤ランプを点灯させるためのものでしかない。

タンク内の燃料の残量を把握するために用意したセンダーユニットはHONDAの古いスクーターからタンクごと外したものだ。

このセンダーユニットを使うためにはタンクに穴をあけ、新しいガスケットを用意しなければならない。

 

これを流用する


                          

 

35番が純正のセンダーユニットだが・・・



 

タコメータースピードメーターの横に取り付けるためのステープレートを作った。

様々考えたがステムのカバーを留めているボルト以外に適当な固定位置が見当たらない。

スピードメーターの両脇にメーターを追加するためのプレートも売られているが、購買意欲をそそるような値段ではなかった。

こんな時はアルミ板から切り出して・・・。

ダミータンク上のインジケーターよりは見やすい位置だがステムのカバーも少々加工が必要だ。

 

ステーはまだ試作段階 


                    

 

バイザーとの取り合いも考えて



 

古いシート地はところどころが綻び、経年劣化による硬化で表面はツルツルだった。

3分割なのでそう難しくないだろうとタカを括っていたが、曲面のきつい部分は指が痙攣しそうになる。

ストーブの前で生地を温めながら張ったが、夏には修正が必要になるだろう。

 

古いシート地 少々カビ臭い


                  

 

新しいシートは気持ちいい



 

予定としてはこの週末からKSR-Ⅱの再生に取り掛かるはずだった。

遅々として進まない『若葉マークのS🔰』のSUZUKI BANDIT250を別室(待合室とも言う)に移動し、さらにVMX12も移動させなければ今後の作業に影響する。

さらに昨夜は『サンちゃん』ことS氏が7年の歳月を費やしてレストアした住宅での特別例会もあった。

予定はいつも未定でアクシデント続きだが、そんな事も楽しめるだけの心の余裕を持ちたい。

所詮は趣味であって仕事じゃないんだから。

 

 

 

 

 

 

 

 

編集長のおまけだよ♬

サンちゃんほんとにお世話になりました~

ありがと~ございました!

 

 

 

  

 

 

  

  

 

 

 

 

用意周到

憧 憬 の 轍

 

2023114日 用意周到

 

1月もすでに半ばだが雪が少ない。

昨冬のような記録的寒波が続くことも無く、今のところ過ごしやすい冬と言えるだろ

う。

次の週末は二十四節気大寒を迎える。

例年であればその頃から2月にかけて最も冷え込み、降雪量も増える時期だ。

そして春を目前にしてドカ雪が降る。

正月早々に大地震に見舞われた北陸地方も東北地方と同じく雪の多い地域と聞いている。

普段ならいつもの事と言える量の雪も被災地にとっては人命に係わる事になる。

これまでも大きな災害が起きる度に自衛隊は活躍して来た。

しかし自衛隊は本来、災害時に出動するための組織ではない。

アメリカのFEMAアメリカ合衆国緊急事態管理庁)のような組織の必要性が何度も声高に語られながらも実質的な動きはない。

 

 

 

この週末の目的はVMX12の作業を一段落させてKSR-Ⅱの再生作業の準備に取り掛かる事だ。

一度組み直した足回りの締め付けトルクやブレーキの作動状況なども再確認。

さらに「転ばぬ先の杖」にはならないとは思いながらもエンジンガードを取り付ける事にした。

走っていてブッ転んだ時には何の役にも立たなさそうだが、いわゆる「立ゴケ」した時には少しだけ役に立ちそうだ。

ところがエンジンハガーのプレートは社外品で、取り付けられているブレースと共にフレームの剛性向上を目的としたもののようだ。

 

フレームのブレースとエンジンハガーのプレート


      

 

エンジンガードを仮合わせ



 

センタースタンドを跳ね上げる度にエギゾーストパイプにぶつかる。

純正マフラーならチャンバー部分に受けがあるのだが社外品には付いていない。

汎用のアングルを使って受けを作ってみたが少々強度不足のようだ。

後日補強するか作り直すか・・・。

それにしてもセンタースタンドがうまく立てられない。

確かに車重の問題もあるがコツが掴めない。

出かけ先でセンタースタンドを使う事はまずないだろがメンテナンス時は無くてはならない。

クルマ用のスタック時に使うヘルパー使ってみたりしているが今ひとつうまく行かない。

 

後日、作り直しかな・・・


                     

 

特訓あるのみ



 

いつの間にかVMX12に完全にハマってしまった。

当面の目的は7月を目途にした車検取得だが、乗る以上はやっておきたい事がある。

キャブレターのオーバーホールやエンジン外装の補修、再塗装はもちろんだが、ダミータンク上のインジケーターにあるタコメータースピードメーターの横に移設する事、さらにインジケーターのタコメーターは燃料計に換装する事だ。

燃料タンクに穴を開けてセンダーユニットを取り付ける事やタンデムシートを燃料の補助タンクに作り変えるとか・・・。

そんな事を考えながら新しいシート地のたたみ皺を伸ばすために仮留めした。

 

タコメータースピードメーターの横に


            

シートも張り直しの準備

 

不思議なくらいに作業はほぼ予定通りに進んでいる。

次の週末からVMX12を一段落しKSR-Ⅱの作業も始めるつもりなので、まずはアタマを切り替える事から始めなければならない。

 

 

明日からの真冬日の予報も気にかかるところだが昨冬のように長く続くものでは無いらしい。

1月も後半、ついに2月に向けて冬本番かと身構えていると、沖縄からは桜の便りが届いた。

 

 

 

閑話休題 課題

冒頭、日本にもアメリカのFEMAのような組織が必要ではないかと書いた。

仮に設立したとして、まず問題になるのはその運営財源だろう。

さらに仮にだが、国会議員のセンセイ方が毎月貰っている「調査研究広報滞在費」を充てればとりあえず十分ではないかと考えるのは私だけだろうか? 

「調査研究広報滞在費」は1993年までは「文書通信交通滞在費」の名目で月額100万円、名称を改めてからも支給額は変わっていない。

単純計算で月額100万円なら年額1,200万円だ。

歳費と合算して振り込まれ、公開や報告の義務はない。

使途を明らかにせずに1,200万円使うことが出来る、と言えば少々乱暴な言い方になるかもしれないが、おおよそ一般的な庶民の感覚からかけ離れている。

公職選挙法により衆議院は465人、参議院は248人が定数と定められている。

両院合わせて713人×1,200万円=・・・,・・・万円?  

災害大国日本とは言え毎日災害が起きている訳ではないのだから、これを財源にすれば日本版FEMAの運営は十分に可能なはずだ。

 

愚直なまでに

憧 憬 の 轍

 

202317日 愚直なまでに

 

冬としては暖かい日が続いている。

朝方の最低気温こそ氷点下だが真冬日の予報は2週間後までない。

加えて雪も少ない。

もちろんこのまま春が来るとは思っていないが、昨冬に比べれば今のところ楽だと言えるだろう。

 

新聞やテレビのニュースは年明け早々に起きた地震羽田空港の事故の続報ばかりだ。

長く続いている余震の規模が大きい事が気がかりだ。

そんな状況でも珠洲市の倒壊した住宅から124時間ぶりで90歳代の女性が救出された。

死者数が増えている中、確かにそれは運もあるかも知れないが、それだけではないような気もする。

 

業種や仕事の形態にもよるが一般的には明日の「成人の日」まで3連休。

「成人の日」が1月の第2月曜日と制定されて以来、この日までがいわゆる「正月休み」の感が否めない。もちろん業種や仕事の形態によるが。

 

 

 

 

『編集長』はピストンリング交換を目的にZEPHYRχのシリンダーまで解体し、ピストンもバルブも外して現状を確認中だ。

ピストンに首振りの形跡は見られず、バルブもカーボンを除去すれば問題なさそうだ。

バルブのシムに関しては今後測定し直すらしい。

休みの内の許された時間にやれるだけの事をやろうとしていた。

 

外したバルブは整理してカーボン落としの準備



シリンダーヘッドも洗浄の準備

 

 

正月休みとは言え、アメリカのカレンダーも関係する仕事をしている者としては2日以降、電話が鳴る度に相手が「Hello」と言わない事を祈りながら「OHMACHI BASE」に出勤している。

 

VMX12の作業はほぼ予定通りだ。

足回りのメンテナンスやフレームの一部の錆を処理してリフトから降ろす準備を進めた。

鉄製のスイングアームの塗装下に広がった錆やアルミ製のデファレンシャルの腐食をサンドブラストし再塗装したが、気温の低さのせいか塗料の硬化が遅い。

手で軽く触るくらいなら問題は無いが硬化しきっていない。

今日中に後輪まで組んでリフトから降ろしたかった。

 

 

結局全面をサンドブラストしたスイングアーム

 

仮組してヒーターの前で塗料の硬化促進

 

塗料の硬化を待つ間にフレームのピボット周辺の発生した錆の処理。

完全に処理するためにはエンジンをはじめ多くの部品を外し、フレームを単体にしなければならない。

当面の目的は足回りのメンテナンスを終わらせ、場所を移動してからキャブレターやエンジン外装に手を付ける事なので、ピボット周りの錆に手を付けた。

浮いている錆や塗装面を持ち上げているような部分をリューターで落とし、POR15を塗った。

 

致命的な状態になる前に


                    

 

POR15を塗ったピボット周り(右側)



 

スイングアームは過剰なまでにゴツく作られているが重量的には扱いやすい。

右後部を一時的に紐で吊ってピボットのボルトを入れる。

微調整は後回し、続いてデファレンシャル。

これが重い。

さらにドライブシャフトのスプラインを合わせて差し込む作業は手探りに近い。

デファレンシャルをジャッキで持ち上げながら何とか収めた。

 

スイングアームだけなら難しくないが・・・


           

 

デファレンシャルを組んでタイヤを仮組



 

リアブレーキを組む準備中 


                  

 

3週間ぶりにリフトから降ろした



 

東京・豊洲市場の初セリで、今年も一番マグロは大間で水揚げされたクロマグロ、238㎏で1億1424万円の値が付いた。

このVMX12は乾燥重量265㎏なのでマグロなら1億3000万円くらいか? 

まぁ、冗談はさておいて一連の作業でのボルトやナットの締め付けトルクの再確認もしなければならない。

 

夕刻、空を見て少しだけ日が長くなったと思った。

道のりは長いのか遠いのか

憧 憬 の 轍

 

202315日 道のりは長いのか遠いのか

 

1日に石川県能登地方で発生した大地震から4日。

生存率が急激に低下すると言われる72時間を時間すでに過ぎた現地では切迫した状況下で救助活動が続けられている。

停電や断水、そして寒さ。

陸路が寸断された事によって滞る物流。

そんな中でも立ち止まる事など許されない時間が流れている。

 

 

 

 

VMX12のスイングアームやデファレンシャルを塗装。

下塗りの塗料の硬化を待つ間に『編集長』のガレージを覗いて見ると、KAWASAKI ZEPHYRχのピストンリング交換をはじめとしたエンジン腰上のメンテナンスが着々と進められていた。

シリンダーヘッドを外す前にカムシャフトとシムの間隙を確認中だった。

 

ヘッドカバーをパッカーン!


                  

 

間隙を確認中の『編集長』



 

既に用意してある新しい部品


                  

外した腰上の部品

 

 

外したてのカムシャフトやピストン


               

まずはカーボン除去からですね



 

KAWASAKIの伝統とも言えるDOHC2バルブエンジンは排気量399ccで46psだったが1996年、Z系エンジン初の4バルブ化によって最高出力は53psを得た。

実走行距離約50,000㎞。

これまでシリンダーにまで手が付けられた形跡はない。

ピストンやバルブに堆積したカーボンは決して多くない。

またシリンダーヘッド内部のオイルスラッジも少なく、オイルにも気を遣って来た事が覗える。

カムやピストン側面に気になる傷やスレは見当たらないが、はっきりした事はまだ何ひとつ言えない。

 

 

一方、脳ミソが水平対向状態になっている『樵の巨匠』も集めた中古部品を前に仮組を繰り返している。

十分に使えるような物もあれば傷んでいるものもある。

そればかりか合わないものもある。

 

リアブレーキのスイッチが・・・?


                

 

このレバーは曲がっているのか・・・?



 

これまで国産車ばかりをレストアして来た。

国産4社に関してはある程度は納まりに共通点のようなものがある気がするが、外車は考え方も基準もまったく違う。

以前、『大魔人・O氏』のDUCATI 900ssの電装系やメーター類の交換を手伝った事があった。

各部の造りが国産車と全く違う事に驚いた事を思い出した。

ある意味このBMWも同様で、さらにマイナーチェンジを繰り返していた時代の車両のため作業は迷路を手探りで歩いているようなものだ。

例えばダブルディスクのフロントブレーキ、マスターシリンダーから伸びるホースを分岐するセパレーターがフュエルタンクの下に付くなんて予想もしなかった。

 

こんな納まりになるとは予想もしなかった


           

 

セパレーターはタンクの下



 

探している部品がメーカー欠品だったり純正部品があまりに高価な場合、当然だが中古部品を漁る事になる。

その結果、必要な部品だけでなく周辺の部品が一緒に手に入る事は珍しくない。

まったく使いモノにならないゴミのような部品まで送られて来たり、ありがたいオマケが付いて来たりする事もある。

かなりマニアックな知識がない限りオークションサイトに掲載された写真だけから的確な判断をする事は難しい。

それでもパーツリストのイラストや取り付け位置の寸法などをもとに部品を集めるしかない。

親切に解説されたマニュアルがあれば助かるがBMWの場合、和訳された物は多くなく、さらに高価なものばかりだ。

 

ブレーキキャリパー


                        

これもブレーキキャリパー

 

さらにブレーキキャリパー 


                   

こんなモノはゴミでしょ

 

 

『樵の巨匠』のガレージから「OHMACHI BASE」に戻り作業の後片付けをしながらFMラジオのニュースで能登地方の地震羽田空港の事故の続報を聴いた。

航空機事故に関しては乗客乗員とも全員無事だった事が海外のニュースでも奇跡的と報じられているらしい。

しかし地震の犠牲者の数は今朝のニュースで聴いた数よりも増え、安否不明者の数から今後さらに増える事が予想された。