細雪

憧 憬 の 轍

 

202336日 細雪

 

深夜、乾いた細かい雪が降っていた。

雪はこの冬の最後の抵抗かも知れない。

相変わらず不順な天気が続いている。

それでも月の半ばには暖かくなるようだ。

観測史上最速とか、最大とか、最長とか・・・。

それはまるで東日本大震災後に耳にタコができるほど聞いた「想定外の~」と言う、ある意味で言い訳がましい言葉に似ている。

 

 

 

バイクのレストアを始めたばかりの頃は外した部品の管理がおろそかで、組み立てる段になって部品を探し回った事がよくあった。

その後、部位ごとに箱や袋に入れるようになったが、久しぶりに部品を紛失したと思った。

VMX12のジェネレーターカバーを戻すにあたり、ジェネレーターのページのシャフト1(右下写真 15番)が見当たらない。

さらにカバーを外した際にも見た記憶がない。

早速この部品を注文し、疑問に思っていた部品の用途を調べてみた。

自分なりに様々な資料も漁りながら、多くの分野の質問を受け付け、読者が情報を提供するサイトに質問を入れた。

 

せめてこの断面図があれば・・・

 

画像は借り物です     

 

1990年型 日本仕様のパーツリストの15番



 

サイトに質問をして即時に返ってきた答えはAIによるもので、「※この回答はOpenAIのGPTで作成されており、最新の情報や完全な正確性などを保証するものではありません。」との注釈付きだった。

そして実は大きく的外れなものだった。

すなわち誤った情報が即時に伝えられた訳で、その後、同様な疑問を持っていた読者から寄せられた幾つかの回答によって部品の用途やパーツリストのイラストが逆向きに描かれている事も分かった。

上の左側の写真は読者から提供された 『The Venturers』と言う海外のサイトのもの。

この断面図を最初に見ていれば部品を紛失したとは思わなかっただろう。

手元にあるCLYMERの整備マニュアルでは「Oil Wire」と表記されている。

用途を考えれば「Shaft1」よりも現実的だ。

『The Venturers』のイラストではマグネットホイールを押えているボルトにオイルが通る穴が開いているが、修理中のVMX12(1998年型2WE)のボルトに穴は開いていない。

結局は自分の手でエンジンをバラし、また組み立てたからこそ生まれた疑問と答えだ。

 

CLYMERのマニュアルでは「Oil Wire」となっている


    

 

YAMAHA純正部品 シャフト1



 

VMX12は本来輸出専用車で国内販売された際には仕様が大きく異なっていた。

そのため現在国内で走っているVMX12の多くは一度輸出されたものを逆輸入した車両らしい。

1985年の初期型から2007年の最終型まで22年に渡り基本的な構造やデザインは大きく変わっていないが幾度となくマイナーチェンジが行われて来た。

そう考えればイラストの部品の向きが逆なのも御愛嬌か・・・。

 

我が国が世界に誇る4大バイクメーカーにケチをつけるつもりは毛頭ないが、パーツリストのイラストや表記に紛らわしい点がある事はこれまでも話題に上っていた。

HONDAのパーツリストではビスやボルトなどは径や長さまでが明記されているが、他の3社のものでは見た事が無い。

さらにマイナーチェンジによって変更された(おそらく・・・)部品についてもイラストや品番表に分かりやすく反映されていないと思う。

パーツリストは各社それぞれによって、ある一定の基準に則して編纂されたものだが、読み解くまでに時間がかかる。

 

 

先週末、部品をなくしたかも知れないなんて言えずにいる側で、『スポカブ・ブラザース(弟)と『特攻隊長』はBANDIT250のジェネレーターカバーを再び外し、奇声と共にエンジンオイルを抜いていた。

『若葉マークのS🔰』は所用で来る事が出来なかったが・・・。

 

点滴タンクまでぶら下げて・・・


                 

で、オイルバットを満たしているのは何?

 

オイルバットを満たしているのはガソリンの混じったエンジンオイル。

何が起こっていたのかを『若葉マークのS🔰』は理解できるだろうか。

その原因と対応策を考える事が出来ないのなら、バイクに乗る事も含めて今後の事も考えなければならない。

そんな苦言を誰かが口にしなければならないのかもしれない。

 

朝起きて南側の窓から外を見ると樹氷や霧氷のようになった庭木が見える。

その枝に積もった雪を見て季節を感じている。

一般的には望ましい事でないかも知れないが、咲いた桜に積もる雪が見た

春を予感して

憧 憬 の 轍

 

202333日 春を予感して

 

2月の終わりに本州南岸で発達した低気圧は湿った雪を降らせた。

天気予報やニュースが伝える積雪量は観測地点でのもので周囲の環境によってはその2倍以上の積雪を見る事もある。

昨春、隣家との境に植えた木々が高く伸び過ぎていたので半分ほどの高さにした。

結果、風の流れが変わったようで今冬は玄関前の吹き溜まりの量が半減した。

特に今回のような重い湿り雪は掻く作業が楽になる。

「OHMACHI BASE」は交差点に面して南側が開けているため吹き溜まりは無いが除雪車の“置き土産”のためにクルマの乗り入れが出来なくなる。

そして時には雪と言うより氷に近く、シャベルだけでは太刀打ち出来ない。

 

 

 

 

先週末に塗装したVMX12のエンジン外装は予想通り満足のいかない結果だった。

気温、すなわち室温の低さを言い訳にしているが、まだまだスプレーガンの使い方が下手な証拠だ。

修正するにも塗料の完全硬化を待たなければならなかった。

塗装の事ばかりを考えていると半月前に修正を依頼していたエギゾーストパイプが届いた。

一般的な鉄材ではなくチタン製だったので、レーシングマシン用のマフラーなどを作っている工房に依頼してあった。

潰れた痕跡と擦り傷は僅かに残っているが、料金からしても満足な仕上がりだった。

 

前のオーナーが遣っちまったようで・・・ 


          

 

ガリ傷は残っているけど満足な仕上がり



 

クラッチやジェネレーターのカバー類を取り付けるために必要なOリングなどは既に用意していた。

ガスケットは大判のシートから切り出す。

最近はガスケット用のシート材も安くないので社外品の既製品を購入する事も考えるが、安価なものの多くは海外で作られたものだ。

ビス穴の位置が合わない事もよくある事なので出来れば使いたくない。

それにしても純正品は高い。

貼り付いている古い純正品のガスケットを出来るだけ丁寧に剥がし、その型をなぞってシートに転写する。

ビス穴の位置だけでなく出来る限り細部まで同じに切り出すのだが思いのほか時間がかかる。

ビス穴は手芸用のポンチを使っているが、多用して来た6㎜や8㎜は切れが悪くなっている。

 

クラッチカバーとウォーターポンプ


               

 

オルタネーターカバー



 

日増しに感じる春の予感、言い方を変えれば冬の終わり、久しぶりにアタマの中は既に走り出している。

中古ながらインカムを買ってみたりツーリング用のバッグを取り付けてみたり・・・。

こんな事をしているから作業が予定通りに進まない事も分かっている。

走り出してしまったアタマのブレーキはかなり甘い。

BremboやAPの4ポッド並みの制動力が必要なのに、ブレーキシューの擦り減った古いドラムブレーキ以下だ。

 

B+COM SB4X lite(中古) 機能的には問題無し


    

 

バッグは取り付け位置や高さが要検討だな・・・



 

昼食のついでに『樵の巨匠』のガレージを覗いて見るとBMWのミッションがきれいに納まっていた。

結局スイングアームを一度外さなければ載せることが出来なかったらしい。

さらに加工した某国産車用のバックステップを取り付ける作業をしていた。

 

かなりバイクらしくなって来た



シャフトドライブだからね~

 

シフトペダル側 


                         

リアブレーキ側

 

このバックステップだけでなくオリジナルに拘らなければ自由度は格段に上がる。

ただ車検を受けなければならない排気量なので守らなければならない事も少なくない。

今後はリアブレーキのマスタシリンダーの位置や取り付けるためのブラケットなどの検討も必要だ。

その後シリンダーから上を外してみる予定だが、水平対向型エンジンのシリンダーヘッドの造りやバルブの開閉機構に今から興味津々だ。

 

今年がうるう年なのとは無関係だが腕時計のカレンダーを進めるのを忘れていた。

さらに卓上カレンダーも2月のままだった。

改めて3月。

2週間予報によればしばらく冬日が続くが、月の中頃からは気温も上がるようだ。

今一度2月を振り返って思うのは、比較的温暖で雪の少ない冬の過ごしやすさだ。

 

 

 

 

閑話休題  失敗の意味、あるいは自戒

(「編集のオマケ」 ではなく「ゴーストライターのオマケ」)

左側の写真の赤い四角で囲った部分に見える白いものは何? 

これはあるバイクのジェネレーターカバーとクランクケースの合わせ面を写したものだ。

ケース内部に白色の配線は無かったはずだが・・・。

カバーを外したのが右側の写真。

「白いもの」の正体は硬化した液体ガスケットだった。

合わせ面の最も低い位置で、確かに見落としがちな部分だが、この状態でカバーを取り付けてもオイルが滲み出る事は分かり切っている。

 

一見して何かの配線のようにも見えるが・・・


        

 

その正体は硬化した液体ガスケットだった



 

さらに写真を拡大して見るとビス穴には細かな黒い異物も見える。

このままの状態でボルトを入れても的確な締め付けトルクが得られない事もある。

完璧さを追求すればこれも切りが無いが「ひと手間」を惜しまないだけで作業の精度は確実に上がる。

所詮は素人の趣味、自己満足の世界。

当然のごとく失敗だらけだ。

しかし失敗から多くの事を学ばなければならない。

「注意一秒、怪我一生」とはよくぞ言ったものだが、不注意がもとで怪我では済まされない事もある。

静かに降る雪は…

憧 憬 の 轍

 

2023225日 静かに降る雪は…

 

季節を疑うような陽気と冬の終わりに降るような湿り雪に、今年はこのまま春が来るのかと思ったのも束の間、やはり北国の2月は優しくない。

前日比で約-15℃。春めいた先週末が嘘のような温度差だ。

2週間予報では冬日がしばらく続くらしい。

夜になってまた湿り雪が降っている。

 

 

 

VMX12のダミータンク上のインジケーターにあるタコメータースピードメーター横に移し、インジケーターのタコメーターの位置に燃料計を増設するために某オークションで燃料計もセンダーユニットも入手していた。

しかし、センダーユニットの電気的な抵抗値とメーターに設定されている抵抗値が一致しないと正しく表示されない。

またしても勉強不足が露呈してしまった訳だが、安価で落札した燃料計に付属していた説明書は配線についてだけで抵抗値の記載はない。

 

 

配線図だけ


                            

 

これじゃダメですね

 

燃料計がTRISCOと言う台湾のメーカーであることが分かったのでホームページを探し出し、抵抗値を質問してみた。

質問文はホームページが英文だったので英文で。

 

寄件者: *** *<***********@hotmail.com>
寄件日期: 2024年2月12日 下午 10:19
收件者: 德立斯營業部 <trisco@trisco.com>
主旨: I have a question about your product.

回覆: I have a question about your product.

The GF-520 specificaiton is listed as below.

E: 240 ohms

1/2: 105 ohms

F: 30 ohms

Best Rgds

 

漢字が読めればそれなりに意味は分かる。

台湾製の部品が多く出回っているので、今後は中国語(北京語)の勉強も必要になるかも知れない。

以前、台湾通から聞いた話では台湾の中国語は北京語が基になっているが、特に表記が本土とは違い、「台湾語」として捉えるべきらしい。

「英語」と「米語」の違いみたいなものさ、と言われてもなぁ~。

中国語と英語が混在するメールは香港あたりでは珍しくないらしいが、見慣れないだけに少し違和感がある 

ところでRgdsって何? 

それとspecificaitionじゃなくてspecificationだよね。

 

 

本来のこの週末は「塗装祭り」、『スポカブ・ブラザース(弟)』のGB250の外装のクリア塗装とVMX12のエンジン外装、さらにはKSR-Ⅱのフレームの塗装の予定だったが、気温はほぼ0℃に近い。

塗装用の部屋には朝から石油ストーブを焚いているが、断熱材など入っていない建物ではせいぜい12~13℃までしか室温が上がらない。

それでも半ば失敗覚悟でGB250の外装のクリア塗装とVMX12のエンジン外装を塗装した。

 

VMX12のエンジン外装


                     

 

GB250の外装はシルバー+クリア塗装



 

予定としてはKSR-Ⅱのフレームも塗装するはずだったがこの週末も予定は未定となってしまった。

そもそも作業予定にアクシデントを想定していない事が、段取りとしては根本的に間違っている。

それはサンドブラスターの窓のガラスの入れ替えだったり、固着したボルトを抜く作業だったり・・・。

 

こんな所でヘリサート処理はしたくない


            

 

ハイ、抜けました



 

アクシデント続きは『若葉マークのS🔰』のBANDIT250も同じだった。

昨年秋の恒例1泊ツーリングの際の故障はマグネットホイールやレギュレートレクチファイヤを交換して治ったはずだった。

しかしジェネレーターカバーを戻す際に不注意からクラックさせてしまった。

不注意によるアクシデントを自業自得というのは簡単だが失敗に学ぶ事も多い。

一段落したとは言え結論は次の週末に持ち越しだった。

 

これで終了? 


                          

 

バッテリーが上がってるし・・・



 

2月最後の週末だった。

閏年だがやはり2月は短い。

深夜、屋根を滑り落ちる雪の音と除雪車の音が聞こえた。

雨水へ向かう

憧 憬 の 轍

 

2023218日 雨水へ向かう

 

例年、春を思わせる日が続くとまとまった量の湿り雪が降る。

それを冬の終わりと捉えて来た。

本来2月中旬は最も寒く、冬真っただ中なのだが2日前に降った雪は冬の終わりに降るような雪だった。

それも気温の上昇と共に溶けている。

除雪車が残した雪が道端にはあるが、明日にはほとんどが溶けてしまうだろう。

 

 

 

作業が予定通りに進まないのはいつもの事、とは言っても日増しに春めいてくるものだから少々焦りだす。

作業を進めるためには当然いくつもの道具が必要なのだが、そのメンテナンスや修理まで考えて予定を組んでいる訳ではない。

今回はサンドブラスターの修理に思いがけない時間を費やしてしまった。

クランクケース両脇のクラッチカバーやウォーターポンプカバーなどは、塗装の下に広がったアルミ腐食のために塗装が剥げかけている。

再塗装のためにこれらを外して、まずはサンドブラストしたが思うように捗らなかった。

 

塗装の下に広がっているアルミ腐食


             

 

クラッチカバーは砂嵐の中



 

本来こんな作業をするためには容量の大きなタンクにエアを溜めてするべきなのだが、そんな設備は無い。

結果として待っている時間が長くなるのだが、冷えた指先を温めるには丁度いい。

気にかけていたアルミ腐食の根は浅く、浮いた塗装ごと吹き飛ばしただけですぐにも再塗装できそうな状態だった。

それでも塗装で隠し切れそうにない傷も幾つかある。

これを埋める算段もしなければ次の週末に予定している「塗装祭り」に間に合わない。

 

ウォーターポンプのカバー


                   

 

どこかのBANDIT250みたいな状態



 

 

 

予定通りに作業が進んでいないのは『樵の巨匠』のBMWも同じだった。

オイルパンを外さずにエンジンをフレームに載せるためエンジン本体を吊り下げるリフトを作っていた。

介護用ベッドに使われていた鉄の角パイプやマッサージチェアに付いていたモーター、さらには建具用の戸車も使っている。

買って来たのは戸車とワイヤーくらいのもので、廃材利用のオンパレードだ!

 

試作段階での吊り下げ実験 


                 

少々高さが足りない・・・

 

補強も加えたて再挑戦


                     

エンジン搭載完了

 

無事にエンジンは載せることが出来たが今度はトランスミッションが問題だった。

どうやらスイングアームを取り付けるのが早すぎたようだ。

こうして試行錯誤を繰り返しながら作業はまだまだ続く。

 

 

予定がほぼ順調なのは『スポカブ・ブラザース(弟)』くらいのものかも知れない。

シートの形状を変えて(いわゆるアンコ抜き)シート地を張る準備だ。

今日は仮留めまでだがシートベースの形状からタッカーが打ちにくい。

 

ストーブの前でシート地を温めながら


             

今日は仮留めまで

 

 

明日は二十四節気の雨水。

気温が今日よりも10℃以上も上がるらしい。

陽気は長く続かないようだが、昨冬を思えば既に春が来たような気になってしまう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

編集長のおまけ!

2月例会だ!

酒を酌み交わしながら、今シーズンのツーリングの話やら

盛り上がりましたよ~

 

 

 

 

 

 

 

 

 

素顔の終結、弔い 番外編22

憧 憬 の 轍

 

202329日 素顔の終結、弔い 番外編22

 

国際郵便で届いた小包の差出人の欄には「終=始」と書かれていた。

住所や電話番号などの連絡先には意味不明な文字が書かれていた。

南米のグアテマラから発送されたその小包に一度開封された形跡があったのは、不審な郵便物と思われたからに違いない。

何もかにも分からないまま開けた小包からはコーヒーの香りがした。

そして古い本が出て来た。栞が差し込まれていた巻末のページの「昭和五十二年七月三十日 十八版発行」の記載がヒントのようにも思えた。

本のタイトルは「いちご白書」、カバーに使われている写真からこの本が映画化後の物だと判別出来た。

「いちご白書(原題 The Strawberry Statement」はアメリカ人作家 James Simon Kunenが書いたノンフィクションで、著書を元に1960年代の学生闘争を描いた映画が1970年6月に公開された。

その後この映画は楽曲や映像などに多くの影響をもたらした。

コーヒーの香りのする本は日本語で書かれ、日本で出版されたものに間違いはなかった。

ページを捲る度にコーヒーの香りをより強く感じた。

この本は「イントロ」、「余波」、「都会とその他の丘原の夏」、「追記」、「説明的注」、「結語」からの6章で構成されている。

読書中に不意に本にシミを作ってしまう事があるとしても、ページを捲る度にコーヒーの香りを感じるのが不思議だった。

あくまで憶測に過ぎないがコーヒー豆を焙煎する場所にこの本が置かれていたとしたなら・・・。

それは古びた記憶を辿る事に依るものだった。

書物を紐解くと言う表現があるが、記憶もまた紐解く物なのかもしれない。

 

 

何らかの理由で出国し7年以上にわたり音信不通の場合は失踪宣言を申し立てることが出来ると何かの本で読んだ記憶がある。

もしもこの本の差出人があの彼ならば、知る限りでは10年以上前に出国し、帰国した話は風の噂にも聞いていない。

彼の実家に電話して尋ねてみても行方知れずのままで、多くを話してはもらえなかった。

電話を切ってから私の憶測はほぼ確証じみたものになった。

 

大学の卒業を間近に控えながらも就職先が見つからず悩ましい日々を送っていた。

それは焦りでもあり、終日抱えた不安でもあった。

そこから飛び出すようにして彼は海外青年協力隊の一員として南米へ赴いた。

具体的な活動内容は聞いたような気もするが詳しくは覚えていない。

任期を終えて帰国した数年後、極めて個人的な理由で再び南米へ旅立ったままだ。

もしも彼の親族が既に失踪宣言を申し立てていたとすれば今後、彼が帰国できる可能性は極めて低い。

ただ私の確証じみた憶測が当たっているとすれば、彼はグアテマラの何処かで生きている。

古本。コーヒーの香り。

「終=始」と書かれた差出人の名前。

世界有数のコーヒー豆産出国のグアテマラ

おそらく彼は人知れずそこでコーヒー豆に携わっているのだろうと結論付けたい。

そして難解な暗号のようなこの本を、彼が愛した人の墓前に置いて来ようとも思ったが、黄色い革製の飾りが付いたキーホルダーと共に、火にくべる事にした。

それはかつて彼が彼女の日記を浜辺で燃やしたように。

 

立春

憧 憬 の 轍

 

202324日 立春

 

立春

いつもなら風に舞う粉雪を横目で見ながらの、暦の上だけの春だった。

2日前の朝に降った粉雪はこれまでに経験して来た2月を思い起こさせたが、既にほとんどが溶けてしまった。

風は冷たいが陽だまりは初春を思わせる。

もちろんこのまま春が訪れるとは思っていないが、雪が少なく温暖な冬の過ごしやすさを実感している。

 

 

 

 

当初の予定では熱を帯びた週末になるはずだったが、手配した部品や材料などが届いていない。

『スポカブ・ブラザース(弟)のGB250はカフェレーサー仕様に改造するために手配したシート、さらにシルバーに塗った外装に使うクリア塗料も次の週末以降の作業になる。

『若葉マークのS🔰』のBANDIT250に至ってはクラックを入れてしまったジェネレーターカバーがまだ見つからず、作業場の片隅に置かれている。

 

動かすとオイルが垂れる


            

 

何時までこの状態が続くのか…



 

そんな中で元気なのは「無謀な軽量化」に拍車がかかりっぱなしの『特攻隊長』くらいのものだ。

以前チェーンカバーを外したために冷却水のパイプの抑えが効かなくなり、路上に冷却水をブチ撒けた事があったにも関わらずカバーを戻そうとはしない。

鉄製のアングル材と針金で押さえていたが、今回はそれをアルミ材に替えた。

確かに鉄よりもアルミの方が軽いが、使ったのはVMX12のタコメーターを移設するために作ったメーターステーの試作品だった。

 

チェーンカバーを戻そうなんて思っていないらしい


    

 

今回もワイヤーリング・・・って、針金だべ!



 

『編集長』は自宅のガレージでZEPHYRχの腰上を洗浄し、バルブ合わせ面の確認に取り掛かろうとしている。

その後、再塗装の準備だが今後のスケジュールはかなり忙しいものになりそうだ。

そうは言っても手抜きは許されないばかりでなく、ここまでの作業を無駄にする事になりかねない。

そんな『編集長』に対してVMX12や『樵の巨匠』のBMW100Rは今のところ時間的な余裕があるが問題が無い訳ではない。

予定ではKSR-Ⅱの再生に取り掛かっているはずだったが未だにVMX12から手が離れないでいる。

キャブレターやエンジンの外装に手を付ける前にKSR-Ⅱのフレームを再塗装する予定は変わっていないが、アタマの切り替えがうまく行かない状態だ。

移設予定のタコメーターのステーは一段落したつもりだが納得できずにいるし、エギゾーストパイプの潰れを修正する手配もこれからしなければならない。

このままでは『編集長』以上に忙しい春が来そうな気がする。

 

今ひとつ納得のいかないタコメーター


             

 

この潰れを修正したい



 

タコメーターのステーに関しては以前買い揃えたアルミ用ハンダ(アルミ蝋)を使ってまったく別な物を作ってみたいと思っている。

ただ問題なのは材料を370℃程度まで熱しなければならない事だ。

位置や角度を決めるための治具が必要になるかもしれない。

またエギゾーストパイプはチタン製なので専門業者に依頼するつもりだが、修正方法によってかかる費用や仕上がり具合がかなり違うようなので、まずは見積もり依頼から。

 

しばらくは高気圧に囲まれるような気圧配置になるため晴れた日が続くようだ。

明日以降、関東地方では警報級の大雪が予想されている。

雪国で暮らす者からすれば笑ってしまうような降雪量だろう。

これまでにも何度か東京に雪が降ったニュースを観た。

むしろ笑ってしまうのは雪の量ではなく首都・東京の脆弱さだ。

 

 

手探りの先に

憧 憬 の 轍

 

2023129日 手探りの先に

 

1970年代の連続企業爆破事件を起こした過激派組織のメンバーで、唯一逮捕されていなかった男が入院先の病院でその身分を明かした。

そして「最期は本名で迎えたい」と話しながらも多くを語らぬまま他界した。

偽りの日々が始まってからおよそ50年。実に半世紀が過ぎ、事件は忘れ去れようとしていたし、事件そのものを知らない世代も今では多い。

もし仮に彼が身分を明かさないまま最後の数日を過ごしたとしたなら、あるいは書置きなどが死後に見つかったとしても、結局は本人以外の誰かが都合の良い辻褄合わせを語るだけだ。

真実を語ることが出来るのは本人しかいない。

捜査関係者の無念や50年に及ぶ逃亡生活の解明などについての報道はあるが犠牲者について、さらに犯行の根源となった思想に関する報道は少ない。

またひとつ、この国のジャーナリズムに疑問が生まれた。

 

 

 

 

 

 

オークションのウォッチリストがBMWの部品でいっぱいの『樵の巨匠』のもとにはタンクやバックステップなどが届いているが、どれもそのまま使えそうな物はない。

もちろんそれは承知の上だが・・・。

 

タンクが付いたか・・・ 


                     

 

反対側はこんな状態



 

タンクの潰れた部分にはワッシャーを溶接し、スライディングハンマーで引っ張り出す予定らしい。

さらにバックステップ(TZR用?)は大幅に加工しなければ使いモノにならない。

知らない人やレストアに興味のない人にはガラクタを集めて喜んでいるおかしなオヤジにしか見えないだろう。

 

ブレーキ側は仮合わせ中


                   

 

シフト側はこれから



 

おかしなオヤジは『樵の巨匠』だけではない。

これまでも「無謀な軽量化」を繰り返して来た『特攻隊長』もVTR250のタンデムステップに手を付けだした。

最初はバックステップが欲しいと言っていたので他車種のものを流用すると思っていた。

そのためには既存のタンデムステップのステーは加工次第で有効な部品だと思っていたが・・・。

 

タンデムステップは?


                      

 

スパッとやっちまいましたね~



 

VTR250のステップはピボットのシャフトでスイングアームと共締めされている。

シャフトは抜いてみるとグリスは残っていたが錆も出ていたので、当然メンテナンスの対象だった。

さらにサスペンションの再調整なども済ませ、走り出さないのが不思議なくらいだった。

 

ピボットのシャフトは予想通り 


                 

 

サスペンションの調整中


 

 

『編集長』はZEPHYRχの腰上を組み直すために部品のカーボン除去と再塗装の準備、『スポカブ・ブラザース(弟)』もGB250の外装の塗装を一段落してクリア塗装の準備。

そして尾の週末も遅々として作業が進んでいない『若葉マークのS🔰』のBANDIT250はジェネレーターカバーにクラックが見つかった。

 

 

次の週末を迎える前に1月は終わる。

本来なら真冬日が続いている頃なのだが、道端の雪はほとんどが溶けてしまった。

今年は春が早いのかも知れない。