憧 憬 の 轍
2016年12月4日 原点
12月。師走と言ってもこの頃は走り回る師もいない。
それにしても時間の経過の早さは驚くばかりで、
驚異どころか脅威と言ってもいい。
こんな時、必ず思い出すのがこの質問だ。
質問1:ついにタイムマシンが完成しました。貴方は乗ってみようと思いますか?
質問2:実はそのタイムマシン、「過去」へ行く事しか出来ません。それでも乗りますか?
質問3:そのタイムマシンで、貴方は「いつ」へ行きたいのですか?
今日も元気に早朝出勤。
まずはクランクケースの組み立て。
既存のガスケット類の除去に思いのほか時間を費やしたために
前回は組み立てに至らなかった。
磨き出した合わせ面に液体ガスケットを塗り、
一気に合わせる瞬間はやはり緊張感が伴う。
合わせてしまえば後はボルトを規定値まで締めこむだけ。
ところが問題勃発!
安さに負けて入手したクランクシャフトインストーラー、
値段の割には作りも悪くなかった。
付属のアダプターはφ10、φ12、φ14。
φ14㎜のアダプターの径を広げてネジ山を切り直すことも考えたが、
ここはひとつ専用工具を作って対処する事に。
一般的にホームセンターなどで手に入る16㎜径のボルトやナットはピッチが2.0㎜。
対してクランクシャフトのピッチは1.5㎜。
用意したのは16×P2.0のボルトとナット。
ナットは5個で145円也。
その他に外径40㎜程度の塩ビパイプとワッシャー。
合計約800円也。
3個のナットを溶接で繋ぎ先端の1個だけピッチ1.5㎜で切りなおす。
鉄製のワッシャーならもっと安く出来たがステンレスだ。
ホームセンターで集めた“材料” 使い方はこんな具合に
メカニカルシールの圧入に次いで、またしても塩ビパイプだ。
急造の道具が必要な理由はもうひとつあった。
クランクケースに当てる部分にツバがついている。
クランクケースの貫通部分にはリブが設けられていて、
仮に16㎜対応のアダプターが付属していたとしても使い物にならなかったからだ。
リブが問題かツバが問題か 塩ビ管の強度はバカに出来ない
今回使ったM16×1.5㎜のタップは、
半年くらい前に編集長が仕事先で処分を依頼されたダイスとタップのセットの中にあったモノ。
バイクに使うようなサイズではなかったので一時捨てる事も考えたが、
錆の少ないモノだけを保管していた。
この奇跡的な偶然に朝から脳ミソはレッドゾーン、
いつもの『林道2号』に近い状態。そしてこの急造の道具でクランクケースは無事に合体完了。
真新しいピストンにリングを組み込む作業も緊張感が伴う。
クランクケースの上で首を傾げているピストンを見て、
自分はこの緊張感が好きなのだと思う。この種の作業は独りの時に限る。
新しいピストンとリング 実にめんこいピストンです
ジェネレーターの組み立て。コイルを付けて、
ローターを付けて、配線位置も確認。動作も確認して一応カバーも組み付ける。
まずはコイル 続いてローター、サクサク組みます
解体時に外したまま袋に入れていたクラッチ一式。
一番外側のプレートだけがずれている。誤組か?
そういえば前オーナーの特攻隊長は悪友のKENの“悪魔の囁き”を聞いて
「強化クラッチがどうの、スプリングがどうの」と言っていたような気がするが、
クラッチに手を付けたと言う話は聞いていない。
この一番外側のプレートはこれでいいのか? クラッチ組み立て作業一時中断
整備マニュアルが無いのでインターネットで調べてみるとこの組み方でいいらしい。
詳しい理由はよく分からないままだが、プレートのフリクションと関係があるとか。
クラッチのスプリングもヘタリ具合を確認しておかなければ片手落ちだ。
自由長は27.5㎜で許容範囲内だった。
「強化クラッチが必要」だとか「滑ってるみたいだ」とかって、
乗り方の問題だったのかスプリングの仕様に問題があったのか、
コメントは控える事にしよう。
シリンダーヘッドの傷にも手を加えなければならない。
クランク室と同様にササクレ立った部分をリューターで削る。
その後古い塗装を落とし、錆の出始めたシリンダーと共に再塗装した。
使用限界は26㎜だとか 合わせ面はガムテープで養生
エンジンをひと通り組み終えボルト類の締め忘れを確認する。
シリンダーヘッドのボルトはエンジン本体を押さえきれず規定値まで締めきれないので、
フレームに乗せてから改めて締め直す事にした。
ひと通り組み終えたエンジン 腰上だけ“お色直し”
エンジン搭載は一人でも簡単に出来るくらいエンジン本体は軽い。
マウントも3本のボルトとヘッドの吊り下げ部分のボルト3本。
そして9月下旬のトラブル発生時に起きていた二次災害、
イグニッションの中で折れたキーの破片も取り出して今日の作業終了。
来週は『2台まとめて試走会』の予定。
エンジン搭載完了! どんなもんだ! 何を使ったかはヒ・ミ・ツ
『林道1号』のXLR250R-BAJA(RⅢM)と
『林道2号』のXLR250RKとの比較にまで発展し収拾が危ぶまれるほどだったが、
何とか着地点が見えて来た。
KAWASAKI 350ssの2番シリンダーの中を、
欠けたピストンリングが暴れまわった。
ピストンとシリンダーヘッドに無数の傷が残ったが奇跡的にシリンダーは無傷だった。
何も分からないままに初めてシリンダーヘッドを外した時の緊張感と驚きを今もはっきりと覚えている。
あの頃はリューターなんてどこにもなくて彫刻刃を木槌で叩いてササクレを削り、
サンドペーパーで均した。
そんな作業でもエンジンは復活し、あの加速と煙は蘇った。
30年以上前の話だ。
あの3ヶ月が無かったら、自分はバイクのレストアなんて興味も無かったかもしれない。
空冷だろうが水冷だろうが、シングルだろうがトリプルだろうが、