この空を飛べたら 加藤登紀子と中島みゆき 番外編4


憧 憬 の 轍



2017年 3月 30日 この空を飛べたら 加藤登紀子中島みゆき 番外編4



 「この空を飛べたら」。


1978年に加藤登紀子がシングルリリースした楽曲。


作詞作曲は中島みゆき



翌年、中島みゆきがリリースしたアルバムの中に本人が歌う


「この空を飛べたら」が収録されているが、


2コーラス目の歌詞が僅かに違っている。

 


 加藤登紀子


「戻らないあの人」と歌った。




 中島みゆき


「戻る筈のない人」と歌った。

 


 二人のどちらの方が歌が上手いとか下手だとか、


または好きとか嫌いとか、


そんな話じゃなくて、


「戻らないあの人」と「戻る筈のない人」の違いだ。




「戻らないあの人」が戻らないのは


「あの人」の意思なのか、


別に理由があるからなのか。




「戻る筈のない人」は戻らないのではなく、


戻れない理由があるのではないか。


 
 

 この僅かな歌詞の違いと


二人の歌い方や声の質が同じ歌を別な歌にしている。

 



 加藤登紀子の歌は


「あの人」が戻ることをひたすら望み、


か細い希望を繋いでいるようにも聴こえる。



 

一方、中島みゆき


「戻る筈がない」と確信した絶望を


希望に置き換えようとしているようにも聴こえる。



 新たな希望のために敢えて絶望するしかない状態でも


「空が恋しい」。




 信じた希望を何があろうとも信じ続けて、


そして「空が恋しい」。



 たとえその空が「飛べる筈のない空」だったとしても。


結局「空」はあまりにも高く遠く、


指先さえ届きはしない。


それでも人は


“あの空”ではなく“この空”を飛ぼうとして


「走る」。


「昔、鳥だった」ことを信じて。


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