望み

 

憧 憬 の 轍

 
 

20171126日  望み

 
 桜木紫乃の小説は暗く重い。
 
「桜木ノワール」とか「釧路ノワール」と形容される闇は底知れず深く暗い。
 
デビュー以来、彼女の作品を読んでいる。
 
気持ちが落ち込んでいる時に読んだなら描かれた闇は、
 
それこそ自殺したくなるかもしれないくらい深い。
 
同時に遠い向こうにある小さな灯りをも描いているような気がする。
 
その灯りが必ずしも明るいものではないとしても。
 
 桜木紫乃だけでなく谷村志穂にしても、
 
北海道在住の作家が描く北海道を舞台にした小説が醸し出す世界が好きだ。
 
釧路や根室の気候や南茅部の漁村の風景、札幌、あるいはススキノと言う名の都会。
 
再開発前の小樽の運河。
 
かつて北海道に暮らした者にとって独特の視覚的なイメージだけでなく嗅覚や聴覚、
 
あるいは触覚にまで訴える文章は時に生々しい。
 
 北海道が生んだ作家は数多くいるが、
 
桜木紫乃谷村志穂の本に手が伸びがちなのは、
 
自分と世代が近いからかもしれない。
 
同じ時代に見た風景を今はもう見ることが出来ない。
 
 
 
 
 バルブを組み直し、腰上を組む。
 
カムチェーンを張って気が付いたのはそれぞれの部品の位置関係から、
 
おそらくHONDAの横型エンジンはある一定量のエンジンオイルが無ければ
 
カムチェーンやテンショナーの動きに支障が出るのではないかと言う事。
 
リング状のテンショナーもさることながら付随するローラーまで
 
十分に潤滑するためには一定量以上のオイルが必要だと思った。
 
オイルのグレードや質以前に絶対的な量が必要だと思う。
 
 オイルの交換サイクルだけでなく、
 
その間の量的な変化にも敏感でなければならないと思った。
 
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シリンダーを組む                                         
 
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「メーカー在庫8個」だったスタッドボルト
 
 
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カムチェーンをセットしてジェネレーターを組む      
 
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シリンダーヘッドも載せて本来の角度に
 
シリンダーを黒色の耐熱塗料で再塗装するのは予定通りだったが、
 
シリンダーヘッドはサンドブラストを終えた地肌が予想していた姿より粗い。
 
当初、真鍮ブラシで磨き上げるはずだったが塗装することにしたので
 
カバー類も急遽サンドブラストする。
 
しばらくの間はエンジンの腰上だけが新しめで気になるかもしれないが、
 
気になる艶は思いの他、抜けが早い。
 
 塗装を済ませたシリンダーヘッドを組み込んでエンジンはほぼ元の姿に戻った。
 
主要なボルト類のトルクは後日改めてチェックしなければならない。
 
次の週末はバルブやポイントのクリアランスも調整してフレームに搭載だ。
 
 
 エンジンを組み立てる傍らで編集長はキャブレターの組立て。
 
アクセルワイヤーも新調したら戻りが劇的に良くなったらしい。
 
自慢の“オートクルーズ”だったのに、ね?
 
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気になるところは様々あるけど・・・               
 
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腰上だけが真新しい
 
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二次コイルや配線類はフレームに隠れる          
 
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パッキン類には苦労したようですね
 
 
 出来ることなら少しだけでも走らせてみてからこのバイクを越冬させたかった。
 
次の週末は既に12月。
 
それでも雪さえなければハナミズ垂らして試乗会だ。
 
 
 編集長のCS90の傍らで再生を待つC92-R
 
C92-R」はオーナーのグランパ・O氏と自分が勝手に名付けた名称で、
 
HONDAが正式に発表したものではない。
 
ここで予定を大きく変更したいと思っている。
 
今回手に入れたこのCB93のエンジンが果たして、
 
どれだけ使い物になるのかをはっきりさせることが最優先だと思った。
 
フレームを切り貼りしなければならない溶接作業はあらかじめ覚悟していたが、
 
それ以前にエンジンの再生だ。
 
このエンジンについては解体過程と部品の検証、
 
そして再生までを細かく記録しようと思っている。
 
 
 希望でもなく期待でもなく「純粋な望み」。
 
それが宗教的な信仰に近いものだとするなら、
 
信じられるものは「可能性」だけだ。
 
可能性を信じて託せない望みなんていらない。
 
春秋も挫折も超えられてこその「望み」。