Let it be  Once Again  3rd

憧 憬 の 轍

 

202212月4日 Let it be  Once Again  3rd

 

真冬並みの寒気が入ってチラチラと降る雪を見たのは数日前の夕方だった。

 

初雪だったが積もるほどではない。

 

ただ寒気は南下し冬型の気圧配置が強まる影響で最低気温はついに氷点下。

 

真冬日」と言う言葉を頻繁に聞く日も近いが、相変わらずFIFAワールドカップの試合結果を気にかけている。

 

 

 

解体したエンジンを組み直すにあたり消耗部品はすべて交換する前提で純正部品の見積もりを取った。

 

毎年春に繰り返される価格改定のせいでどれもこれも安くは無い。

 

「ゴソウダンパーツ メーカー在庫あり 無くなり次第廃盤」。

 

この「ゴソウダンパーツ」の意味をどうとらえていいのか10年前も悩んだものだった。

 

既に廃盤ながら要望がある程度の数になれば再販する可能性がある部品と言う意味に捉えていた。

 

 

 

10年前の資料


                                 

 

 

 

サービスマニュアルもボロボロ



 

 

今回はカムチェーンのスリッパ―ガイドがそれで、リプレイス品もあるが出来るだけ純正部品を使いたい。

 

言うまでもなく潤沢な資金がある訳ではないので、例えばクラッチのプレートやブレーキの部品などはエンジンを再びフレームに載せてからでも交換できる。

 

そんな事も考えながらオイルポンプやクラッチを外した。

 

オイルポンプは使われているOリングをすべて交換する予定で既に手配済み。

 

クラッチは解体したところフリクションディスクはまだ使えそうだが、ハウジング内部の汚れを見て迷うまでも無いと思った。

 

スプリングは基準値31.25㎜、使用限度29.75㎜に対しすべて約31㎜程度だった。

 

 

 

ハウジング内部は真っ黒


                    

 

 

 

スプリングはまだ大丈夫



 

 

 

どんなに丁寧に扱っても所詮消耗部品は消耗部品でしかない。

 

物理的に擦り減る部品もあれば変形してしまう部品もある。

 

古くても状態の良い機械はそんな消耗部品の交換タイミングが適切だった機械と言えるのかも知れないと思った。

 

下側のクランクケースを外す。

 

10年前の補修痕から今回のオイル漏れの原因と思われるクラックを探したが断定には至らなかった。

 

後日、このケースを補修し直してスペア部品にしたいが、今はそんな事より組み直す事だけを考える事にする。

 

 

 

クランクケースをパッカーン


                   

 

 

 

問題の下側クランクケース



 

 

 

10年前の補修痕


                         

 

 

 

ケース内側 今さらながらアヤシイのはここか・・・

 

 

ひと通りの解体作業が終わってエンジンを組み直す前に、各部の再塗装などを考える。

 

新しく使うために用意した下側クランクケースはアルミナでサンドブラストし塗装する準備もしなければならない。

 

耐熱塗料だけでなくウレタン系の塗料も使っている。

 

全体的な工程を考えてから手を付けなければ来春に間に合わなくなりそうだ。

 

サンドブラスト後は残っているメディアをブラシやスポンジで極力洗い流す。

 

特に内側は入念に。

 

 

 

サンドブラスト後の下側クランクケース


            

 

 

 

残っているメディアを洗い流す



 

 

 

今後のエンジン再組み立て作業のためにもサンドブラストを終えた下側のクランクケースを塗装したいところだが焦りは禁物。

 

一見して乾いているように見えても冷え切った金属は温度差によって結露を生む。

 

夏場ならまだしも冬場の作業は気温にまでも気を遣う。

 

作業手順を考えながらのコーヒーブレイクはまず手を洗ってから。

 

日に何度も手を洗うため保湿性のあるハンドクリームが欠かせない。

 

消耗部品として解体前から交換を決めていたカムチェーンテンショナーのスリッパ―とガイドは明日にも新品が届くが、テンショナー自体は再利用を考えている。

 

純正部品はすでに廃盤だしカムチェーンの緩みによって削れて入るが可動部分が動かなくなるほど痛んではいない。

 

 

 

外したカムチェーンテンショナー 


              

 

 

 

この摩耗が考えどころ



 

 

 

既にメーカー廃番になっている純正部品がオークションで見つかる事は珍しくない。

 

考えてみればこのバイクは日本で発売される前に北米でデビューした車両だ。

 

国内販売後に排気量400ccを上限とする免許の規制を受けて398ccの国内向けモデルが作られたが北米やヨーロッパに多く輸出されている。

 

これまでも海外のオークションで幾つもの部品を見つけて来た。

 

クランクケースの上下を合わせるのは来春の雪が消える頃で構わないのだからNOS、いわゆるデッドストックを探してみようと思う。

 

メーカー純正と言っても古い樹脂製の部品は使う気になれないがテンショナーは鉄製だ。

 

 

 

『スポカブ・ブラザース(弟)』は燃調がうまくいかないキャブレターのために新しいフロートを買ったが、振るとカラカラと音がする。

 

経年劣化とも言える古いフロートはハンダ補修で重量が大きく変わってしまったからだ。

 

マニュアルに従って油面高を調整するが結果は変わらないと言う。

 

1960年代、バイクのメーカーだけでなくキャブレターのメーカーも様々な実験的な製品を作っていたらしい。

 

それが日本製のバイクやキャブレターのその後の成功につながっているのだと思うが、理屈は理屈でしかなかったものもあった。

 

それでも開発を諦めなかった先人の熱意には、脱帽どころか土下座しても敵わない。

 

 

 

ペットボトルも使いよう 油面高測定


              

 

 

 

さすがにもう限界かな・・・



 

 

 

今後10年を見据えての作業だが、本当に自分は10年後もバイクに乗る事が出来ているだろうか。

 

バイクのメンテナンスよりも自身のメンテナンスを優先しなければならない事は分かっているつもりだ。

 

幼なじみやかつての同級生が癌の手術を受けたとか、定期的な健康診断の末に脳動脈瘤が見つかったとか。

 

既に鬼籍に入っている者も少なくない。

 

窓の外に音も無く降る雪を見ていたら何故か感傷的になってしまった。