憧 憬 の 轍
2020年5月6日 桜
花が咲いている。桜も梅も躑躅も。
公園を囲むように植えられた桜の樹から、
風が吹く度に花びらがはらはらと舞い散る。
しばし足を止めてそれを眺めているが園内は静かだ。
公園自体は閉鎖されている訳ではないのに、
時折人が横切る程度だった。
公園の桜は既に多くの花びらを落し、
外周の歩道をピンク色に染めている。
その風景に初夏を予感し、
梅雨前の晴れた空を想う。
そんな夏に向かう高揚感すら今年はどこか空しい。
政府はCOVID-19の感染拡大の収束が見通せない事から、
特措法に基づく「緊急事態宣言」の期間を延長した。
「不要不急の外出を控える」とか「三蜜を避ける」とか、
さらに「自粛要請」のために人出はどこも少ない。
期間延長に伴って今度は「新しい生活様式」と言うキーワードが聞こえて来た。
「新しい生活様式」とは言ってもこれまでさんざん言われて来た事と大差はない。
基本的には「マスクの着用」、
「身体的距離の確保」、
「手洗い」だ。
ただ気になるのは特定警戒都道府県以外の34県においては県内の外出や小規模イベントの開催も認められるようで、
飲食店の自粛解除の問題と共に県ごとに差が出る事になる。
文部科学省は段階的な学校再開を促す通知を各地の教育委員会などに出したらしいが、
判断は各地域に委ねられる。
県ごとに状況は違うとは言え、
教育の場でも差が生まれそうな気がした。
地域によっては通常通りに授業が行われる所もあればオンライン授業を実施している所もある。
また環境が整わずに出来ない地域も少なくないようだ。
新学期を9月からとする案も検討されていると言うが9月までに収束する保証はどこにも無い。
もしも学校が9月に始まる事になったら、
卒業や入学と桜の花は遠い思い出になってしまうのかもしれない。
概ね1ヶ月程度延長された「緊急事態宣言」だが再延長の可能性はないのだろうか?
この問いに「ない」と 断言できる人はおそらくいない。
希望的観測と募る不安の狭間で誰もが多くの問題を抱えてしまっている。
東日本大震災の後、
「自分に出来る事は?」と考えた人は少なくなかった。
結果としてそれはボランティア活動への参加だったり、
あるいは金銭的、
物質的な各種の支援として形を見た。
―バイク乗りには何が出来るのか―
可能性も選択肢もひとつではなかったが、
被災地の経済に僅かながらも貢献する意味でジュース1本、
ラーメン1杯でいいから被災地で“金を使う事”だと思った。
このコロナ渦の中でバイク乗りに何が出来るのか?
おそらく答えは「Stay Home」の一言に尽きるだろうが、
天気が良ければじっとしていられない。
飲食店の営業問題や学校の問題と同じく医療関係の問題も大きい。
医療従事者の感染が後を絶たないのはマスクや防護服などの不足だけではなく隔離施設や病床数の不足も一因だ。
日本は幸いにもMARSやSARSの蔓延を免れた事もあって、
パンデミック対策が諸外国に比べて遅れていた事は否めない。
そして今、対岸の火事ではなくなった。
まさしく「人のふり見て我がふり直せ」だったのだ。
PCR検査数が一向に増えない中で厚生労働大臣が抗体検査に着手すると記者会見して3週間になるが、
感染の実態は不透明なままだ。
今や自分の身は自分で守るのは当然の事だが、
この国の医療も守られなければならない。
もしも感染し、さらに重症化した時にすがる最後の砦として。
結局どこへも行けず、
散歩程度の距離をそれぞれが走った。
バイクに乗っている時間よりも休憩時間や作業場でメンテナンスしていた時間の方がはるかに長かった。
シリンダーヘッドカバーの修理を終えたXL250R PARIS-DAKARの後には電装系にトラブルが出た『大魔神・O氏』のCS92が入って早速配線類のチェック。
3日(日曜日)のツーリングで不調が現れた『過積載軍団・2号車』、
R氏の中華モンキーの症状は高回転時の点火タイミングが合っていないような状態だった。
点火タイミングと言ってもCDI点火なのでユニットごと交換するしかないが、
残念なことに探す手立ては少ない。
不要不急の外出を極力控えて「Stay Home」。
おかげで読みかけの本がなくなった。
国の指導に従って通販を利用して3冊ほどの古本を買ったがまだ届いていない。
結局は作業場で古いバイクの整備に明け暮れてこの連休も終わった。