冬の日差し

憧 憬 の 轍

 

2022年1月16日 冬の日差し

 

比較的温暖な日が続いて過ごしやすいのはいいが道路は最悪の状態。

 

主要幹線は除雪が行き届いているが枝道は中途半端に溶けて路面はガタガタ、

北海道で暮らしていた頃は「そろばん道路」と呼んだことを思い出す。

 

アナログな昭和世代こその表現だと笑うしかない。

 

最近は「オモラシ君1号」ことKAWASAKI W1のせいでアタマの中は右脳と左脳がバーチカルツイン状態だが、

クランク角が毎日変わって困っている。

 

 

 

腰上のガスケット類を全交換するための解体作業はとりあえず順調だが、

合わせ面に残ったガスケットや併用された液体ガスケットに苦戦している。

 

貼り付いた古いガスケットを除去しても表面が劣化して荒れている合わせ面に新しいガスケットを挟みたくない。

 

オイルストーンで油磨きする訳だが、

タペットカバーに残っていた傷は見過ごせないものだった。

 

昨年末、『編集長』は某金物屋の在庫処分を手伝う過程で大量のサンドペーパーを貰って来た。

 

その中には数種類の耐水ペーパーがあったのでガラス板の上でオイルを撒いて研磨する事にした。

 

 

 

 

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見なかった事には・・・出来ない



                

 

 

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ひたすらシャコシャコ・・・シャコシャコ・・・



 

 

これまでに何度もタペット調整した過程でつけられた傷だろうことは想像に難くない。ガスケット類はとりあえず用意したが各部のOリングやオイルシールも限界を超えている。

 

ここまで手を入れる以上それらも交換しないのは片手落ちだ。

 

製造から50年以上経っている事もあって純正部品は見つかってもトンデモナイ値段だ。

 

古い純正部品よりも新しいリプレイス品の方がいいと思っている。

 

オイルシールやOリングは寸法と形状さえ分かれば新品が手に入るのだから。

 

 

 

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この後さらにオイルストーンで磨く



 

 

 

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ヘッドカバー側も合わせ面は傷だらけ



 

 

 

シリンダーヘッドカバーを外す前に、

タペットカバーのスタッドボルトの錆が気になっていたので抜いてみた。

 

2気筒分各4本、貼り付いている古いガスケットを除去しやすくするためにも先に抜いた方がやり易い。

 

8本ともカジリ付も無くダブルナットを噛ませただけで抜けたので、

ネジ山の錆を処理して再利用しようと考えている。

 

シリンダーヘッドを外すにあたってもエギゾーストパイプのフランジを押さえるスタッドボルトを先に抜くことにした。

 

タペットカバーのスタッドボルトはM6だったがこっちはM8。

 

ん~、質実剛健ってか・・・、KAWASAKIだもんな。

 

 

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タペットカバーのスタッドボルト8本


              

 

 

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エギゾーストパイプのスタッドボルト4本



 

 

シリンダーヘッドカバーは押さえているボルトを抜くと予想通り押し上げられて簡単に外れた。

 

ロッカーアームのプッシュロッド当り面にも傷は無いようだ。

 

 

 

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カバーを外したシリンダーヘッド


                

 

 

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ヘッドカバーの裏側



 

 

ここまで作業を進めて気になったのはシリンダーヘッドもカバーも、

ボルト類にかかっているトルクが低いように感じた事だ。

 

シリンダーにこびり付いているオイルはシリンダーヘッド下から滲んだものなのは間違いない。

 

規定値まで締め込まれていなかったのかもしれない。

 

 

 

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外したシリンダーヘッド


                     

 

 

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燃焼室は予想通り真っ黒



 

 

シリンダーヘッドを外し、

ガスケットを除去する前にバルブを外す。

 

いつもは大きくて使いづらい4輪車用のスプリングコンプレッサーだが、

このエンジンには丁度いい。

 

 

 

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EX側



                               

 

 

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カーボンの噛み込みは少ない



 

 

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IN側


                               

 

 

 

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噛み込んだカーボンだらけ!



 

 

 

そして本日のメインイベント、シリンダーを外す。

 

外す、と言うよりはピストンを残して抜く訳だ。

 

あらかじめシリンダー内には潤滑剤を吹き付けておいたので妙な抵抗も無く外す事が出来たが、

ガスケットの張り付きは接着剤でも使っているのかと思うほどだった。

 

 

 

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ガスケットの貼り付きが激しい


                 

 

 

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プッシュロッドを押すカムに傷は無い



 

 

ピストンも外して磨きたいところだがピストンピンは圧入されているらしい。

 

だとすれば簡単に外せるはずも無く、

外したとしてもエンジンの腰下を残した状態では元に戻せないのでピストンには手を付けずに外した部品の点検を最優先する事にした。

 

シリンダーは滲んだオイルでコーティングしたような状態。

 

それだけに錆は少ないようだが表面の油分をまず何とかしなければ次のステップに進めない。

 

 

作業はほぼ予定通りだった。腰上を解体し、

一部だが古いガスケットの除去や合わせ面の研磨も。

 

塗料剥離剤をガスケットの除去によく使うが、

この車両に使われているガスケットはなかなか頑固だ。

 

まぁ、KAWASAKIだから・・・、

などと訳の分からない理由で納得しながら気が付けば外は薄暗くなっている

 

 

 

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シリンダー、シリンダーヘッド、ヘッドカバー・・・


      

 

 

 

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細かい部品は部位ごとに袋に入れる



 

 

次の週末はシリンダーにこびり付いたオイルの処理から始めるつもりだ。

 

シリンダーはアルミナでサンドブラストし黒色の耐熱塗料を吹き付ける予定だが、

シリンダーヘッドやヘッドカバーは重曹でブラストする事を考えている。

 

ソーダブラストだ。

 

水を併用してのウェットブラストが理想的だがそんな設備は無いのでとりあえずドライで。

 

 

 

 

閑話休題 

 

以前から欲しいと思っていたダイヤル式のトルクレンチを手に入れた。

 

古い物だが新品未使用。

 

新しい物であってもどんな使われ方をしたのかが分からない中古品よりいいと思った。

 

安価で手に入った理由はおそらく表示単位が㎏f・㎝だからだろう。

 

国際単位系(SI)によってN・mが常識的な時代だが、

日頃手を付けるバイクのマニュアルの表記はほとんどが㎏f・㎝だ。

 

 

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古くても新品未使用


                       

 

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表示単位は㎏f・㎝



 

 

1N=0.1019716129779㎏f すなわち1㎏f=9.80665N 

 

そんな事はとっくに分かっていても換算すること自体が面倒なのだ。

 

マニュアルの中にはlb(ポンド)で書かれている物もある。

 

英国車を手本にしてバイクを作っていた時代の物だ。

 

今後、N表示の精密なトルクレンチが必要になったらデジタル表示の物を買おうと思うが、そんな日は来ない気がする。