憧 憬 の 轍
2022年2月27日 捲土重来
遠い西の彼方からキナ臭いニュースが次々に届く。
虚と実とが入り混じる報道は鵜吞みに出来ない。
SNSの普及がさらに情報を混乱させる。
真実を知るためにはそこへ行って自分の眼で確かめるしかない。
「国益」とは何か。
「権力」とは何か。
「国防」とは何か。
かつてこの日本の米軍基地からも多くの兵士がベトナムへ赴いた時代があった。
意味も分からないままに見ていた反戦デモや、今も耳に残っているシュプレヒコールの声。
結局、何も変わっていなかったのかもしれない。
シリンダーヘッドやヘッドカバーはアルミナでのブラストを終え、さらにグラスビーズでブラストしてみた。
これまでにグラスビーズを使った事はあったがアルミナでブラストした上で試すのは初めてだった。
もしも重曹を使った時のように満足な結果が得られなかったら・・・。
そんな事を考えているヒマはない。
クランクケースのカバーはバフで顔が写るくらいに磨くつもりだが、シリンダーヘッドやヘッドカバーは少し光沢が見られる程度にしたかった。
グラスビーズを用いる事によって鋳込み時のバリなどが目立つようになった。
それでも鈍い光沢には満足だ
早速バルブやロッカーアームなどを組み込んでシリンダーに載せたいがロッカーアームシャフトのOリングが硬化し限界を超えている。
キャブレターのガスケットやOリングと一緒に手配するべきだった。
いつもの事だがドンガラ状態で載せて、せめて雰囲気だけでも・・・。
こうなると腰下が気になりだす。ヤバイな・・・。
せめてバルブを組み込む準備をしていると『特攻隊長』が来た。
眼鏡の奥の瞳には少女漫画のような星がキラキラしてる!
春が待ちきれずに「走る」と言いそうだったが、目的はスクーターの運搬だった。
『樵の巨匠』まで駆り出してのサルベージ大作戦ってか。
気になるのはもちろん天気、降るとすれば雪ではなく雨。
それでも『特攻隊長』なら仮に吹雪だったとしても笑いながら運んだと思う。
SUZUKI SKYWAVE250。
2014年型で型式はCJ46A。
詳しい事は分からないがCJ46Aは最終モデルらしい。
マルチリフレクターヘッドライトだとかスマートキーシステムだとか電子制御式CVTだとか・・・。
調べてみるとよく分からない単語が目白押しだが、キャブレターもポイントも付いていないスクーターだって事だけは分かる。
そんなモノを仕入れてきて『特攻隊長』は何を考えているのか・・・。
次の週末はすでに啓蟄、悪い虫が騒ぎ出す訳だ。
1年ほど乗っていないとの事だが屋根のある車庫で保管されていただけに状態は悪くない。
まずはエンジンを再始動させてみるためにシリンダーに潤滑剤を吹き込む。
ゆっくりピストンを動かしてみたいが、言うまでもなくキックレバーは付いていない。さらにスクーターの整備はエンジンに辿り着くまで様々な樹脂製の部品を外す事から始めなければならない。
それは『特攻隊長』に最も不向きな作業だ。
バッテリーを繋いでも電源が入らなかったりヒューズボックスの位置が分からなかったり、オマケに3個あるキーは使うキーによってアラートが出たり・・・。
整備と言うより取扱説明書でお勉強した結果、エンジンは無事に始動した。
サイドスタンドを外さなければエンジンがかからないとかブレーキを引いていないとセルモーターが回らないとか、その程度の機能なら普段手を付けているバイクにもたまにある話だが、キーの登録なんて話は初めてだった。
今後、『特攻隊長』には取扱説明書をよ~く読んでから乗ってもらわなければならない。
『特攻隊長』が格闘している傍らでW1のバルブを組む。
ロッカーアームシャフトのOリングだけでなくシールワッシャーや他の部分に使うOリングも新しい物が必要なのでパーツリストから品番を拾った。
移転した作業場の周辺を改めて見渡すと、シャッターで閉じられたままの建物や更地になってしまった所が目立つ。
そんな商店街の一角で商売を始める訳でもなく、趣味に没頭できる場所を得た。
これまでに「再開発」と言う言葉を耳にタコが出来るほど聞いて来たが、古い時代に形成された商店街が再び商店街としての再生に成功した例は少ない。
それは人々の生活様式が時代と共に変わってしまったからだ。
だが用途や目的を変えて活気を取り戻した街は多い。
ならばこの寂れてしまった商店街に、週末だけでも趣味に興じる人たちが集まったら・・・。
寂れたとは言え、今もここで頑張っている人たちの一助には成れないのだろうか。
さらには自分たちのためにも。