憧 憬 の 轍
2022年3月20日 懐疑と教訓
16日深夜の地震は東北地方南部に大きな被害をもたらし、11年前の忌まわしい記憶を呼び起こした。
新幹線は寸断され、停電も広く起こった。さらに製造業にも影響が出ている。
依然として収まらないCOVID-19の事や、ウクライナ情勢の影響を受けた食品の値上げなど、明るいニュースは少ない。そんな中で起こった地震、「泣きっ面に蜂」どころじゃない。
先週から作業予定を入れ代えてタンクやコックに手を付けていた。
今日はふたつのタンクの仕上げから。
W1は燃料コックのパッキンを交換しなければならないようだ。
ゴム製品としての弾力や柔軟性から再利用できると思っていたが僅かに漏れている。
この4つ穴パッキンは単品で純正部品が手に入らない。
リプレイス品を探しても高額な補修キットしか見つからない。
パッキン類3枚と金網のストレーナー、真鍮パイプ2本のセットで最安値がなんと5,800円!
直感的に思い付いた事だったが、他社の純正部品から使えそうな物を探してみた。
ゴム製の部品だけでなく樹脂製の部品をバイクのメーカーが自社生産しているはずがない。
この4穴パッキンはHONDA純正部品で126円/個。
さらに真鍮のパイプは521円/m。
コックのハンドルに付くパッキンなどは手元にあるNBRやフッ素ゴムのシートから切り出せばいい。
これ以外にもロッカーアームカバーに使うナット(長ナット)と同じものがYAMAHAの純正部品にあったようだが、既にメーカー廃番だった。
今さらながらよく考えてみればバイクの主要な部分以外は、いわゆる下請け企業が造っているのだ。
パーツリストに同じ部品ながら違う品番が記載されている事がよくあるのは製造元の違いでしかない事を忘れていた。
そんな事に改めて気づくのもレストアの楽しみのひとつと言えるかもしれない。
W1のコックを済ませC92のコックを外してみると内部は錆と堆積物で満たされていた。
このコックは特殊で代用できる部品は無い。
そしてもちろんメーカー廃番、一部のマニアの間ではリプレイス品が重宝されているが高価なだけでなくなかなか見つからない。
鉄製の部品の錆はタンクに使っている「花咲かG」に浸け込み、アルミダイキャストの部品は洗浄後に腐食を確認してからでなければ対応できない。
思わずため息が出たがCB50改のタイヤとスプロケットを持って現れた『スポカブ・ブラザース(弟)』、そして家庭の用事で忙しいはずの『特攻隊長』までやって来て作業場はいつもの状態になった。
W1のアクセルやクラッチなどのワイヤーもこの機会に確認する事にした。
油分が抜けているだけでなくチューブ内の錆が酷ければ交換する準備もしなければならない。
『編集長』はZephyrχのブレーキのメンテナンス作業。
4ポッドのダブルディスクなのでピストンは8個、そのシール部分に固形化した堆積物の除去は手間のかかる作業だ。
そしてさらに今日はキャリパーのサンドブラストに忙しい。
#50アルミナでブラストした上で♯50グラスビーズでブラストした仕上がりが予想以上に綺麗だったので、作業場には『林道1号』ことT氏所有のサンドブラスターが運び込まれている。
T氏のブラスターには#50アルミナ、自作ブラスターには#50グラスビーズが入っている。
さらに『編集長』が仕事で使っている静音型のエアコンプレッサー。
錆や古い塗装を落すだけでなく仕上げや下地処理を考えれば理想的な状態だ。
前後のタイヤ交換を終え『スポカブ・ブラザース(弟)』はブレーキと共にフロントフォークもメンテナンスに休む暇もない。
午前中は『特攻隊長』が、午後からは『悪友のKEN』が手伝っていると言うか、煽っていると言うか・・・。
それにしても悩ましくも恨めしいのは夕刻に届いたKAWASAKIの純正部品だ。
せめて昨日届いていれば今日の作業内容は大幅に違っていた。
しかし、シリンダーヘッドやカバーの取り付けを終える前に点検しておかなければならない事や、その後の作業工程について考えるために今回のアクシデントは悪い事ばかりでは無かったと思う。
忙しい時ほど立ち止まってみろと誰かが囁いたような気がした。
3月も早いもので明日は春分の日。
一昨日に降った湿り雪、そして雨。季節は4月に向けて一気に春めく。
「春は別れと出会いの季節」と言うがこの春、何と別れ何と出会う事になるのだろう。
それが何であろうと、誰であろうと、来る者は拒まず去る者は追わず。それでいいと思っている。
それにしても気がかりなのはウクライナ情勢だ。
「真実はひとつ」というが、ひとつしかないのは事実であり、真実はそれぞれにそれぞれを信じる人の数だけあるのだから。