憧 憬 の 轍
2022年11月26日 Once Again 1st
それは10月8日の朝、夜半の雨に濡れたアスファルトに広がる虹色の油のシミを、キャブレターがオーバーフローを起こしていると勘違いしたことから始まった。
恒例の「1泊ツーリング」に出かけようとした朝の事だった。
1975年製の事故車両を貰い受け、3年がかりで再生し終えたのは2012年9月の事。
あれから10年が過ぎ、今になって‘75 CB400Fourの古傷が疼きだした。
オーバーフローだと勘違いしていた油のシミの原因は下側のクランクケースからのオイル漏れで、修復したはずのクラックが再び開いてしまったようだ。
これを修復しようと樹脂系のパテなどを使ってみたが望ましい結果は得られず、下側のクランクケースを交換する事にした。
最初に手に入れたクランクケースは惨たらしいまでの補修痕が目に余り販売元に突き返した。
その後新たに入手したケースでもう一度エンジンを組み直すためにサンドブラストの準備から。
まずはフレームからエンジンを外す作業。
改造したエンジンスタンドで真横にスライドさせて引き出す。
フレームの構造上進行方向右側にしか引き出すことが出来ない。
エンジン単体で約65㎏、スタンド自体に問題は無いがエンジンのハンガー部分に通したφ10㎜の鋼棒に一抹の不安が拭えない。
主な目的は下側クランクケースの交換だが、実走距離は約30,000㎞。
なかなか落としきれない汚れや錆も目立ち始めたし、10年前に予算の都合で交換しなかったピストンリングなども含めて消耗部品はすべて交換する事を考えている。
スタンドに括り付けたエンジンを少しでも軽くするために、まずは腰上の解体にかかる事にした。
一時的に上がった気温は雨を呼び、再び冷たい風を招く。
陽だまりで欠伸をしていた野良猫も最近は見かけなくなった。
いち早く季節の変わり目を感じていたのは窓の桟に入り込んだ虫たちだったのかも知れない。